濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「燃え尽き症候群」から岩谷麻優が迎えた“キャリアで一番のピーク”…右ヒジ脱臼まで続いた藤本つかさとの“最高峰の女子プロレス”
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/07/12 17:04
藤本つかさに勝利し、IWGP女子王座を防衛した岩谷麻優
組まれなかった、1.4東京ドームでのタイトル戦
実はベルトを巻いてからも悔しい思いをした。岩谷は今年1月4日にスターダムのリングで朱里を下し、王座防衛に成功。ただそれは、新日本プロレス恒例の1.4東京ドーム大会でタイトル戦が組まれなかったということでもある。IWGPのベルトを持ちながら、新日本最大のビッグマッチから外れたのが悔しかった。
「女子の試合を入れればよかったと思わせたい」
それが岩谷の原動力にもなった。
「だから朱里さんとの試合では、自分を追い込みましたね。バチバチに、闘志むき出しでやり合おうって。女子とか関係なく、このベルトを“IWGP”として確立させたかった」
試合で心掛けているのは「自分を全部出し切る」こと。スターダムのタイトルマッチは30分一本勝負が基本だが、IWGPは60分一本勝負だ。
「長い試合になると考えると、どこかでスタミナをセーブする必要もあるんです。でもそこでスタミナを考えずに動けるかどうか。体力温存ではなく一瞬、一秒を全力で闘わないと。今はそれができている自信があります」
「自分はIWGPのチャンピオンだと胸を張って」
自信があるし必死でもある。「自分はIWGPのチャンピオンだと胸を張って言えます。赤・白のベルトを巻いてた頃は“こんな弱い私がチャンピオンでいいんだろうか”って思いがちだったんですけど」。
目標はIWGP全王座を通しての最多防衛記録を樹立すること。新日本でのタイトルマッチも増やしたいという。
「IWGPは新日本のベルトじゃないですか。スターダムのベルトと同じではいけない。特色を出したい」
藤本戦では、アイスリボンでの防衛戦という新たな領域にも踏み込んだ。岩谷麻優は岩谷麻優にしかできないプロレスで、IWGPの価値を高めていく。