100ｍＨの福部と「五輪で結果を残す」の約束も…

　女子100mHでパリ五輪に内定した福部真子（日本建設工業）と君嶋は同じ中国地方出身で中学からの仲。日体大では同期だった。君嶋と同じく、福部も広島皆実高時代にインターハイ3連覇を達成した後、一時は競技を辞めようと思うほど伸び悩んだ過去を持つ。同じ境遇にあった二人は2020年秋頃から共に練習するようになり、22年の日本選手権で互いに初優勝。オレゴンでは君嶋がリレーで、福部が100mHでそれぞれ日本記録を樹立している。

　オレゴンに旅立つ前に取材した際には「パリ五輪に一緒に出て結果を残す」という熱い目標を語っていた二人。共に中高時代の栄光と苦難の道を乗り越え、同時期にトップシーンに返り咲いた同志だからこそ、計り知れない葛藤があったはずだ。君嶋は、翌日の200m決勝までにどのように気持ちを立て直したのだろうか。

標準記録突破＆日本選手権優勝でパリ行きを決めた100ｍＨの福部。君嶋とは中学からの仲だ ©Asami Enomoto

「中学1年で陸上を始めて、2年で中学記録を出してから本当に色んなことがありましたし、数々のオリンピックのチャンスを逃してきました。それでもここ数年、代表やオリンピックを目指せる立ち位置まで来られたことは、客観的に見たら『成長』だなと受け止めて、堂々とレースを楽しもうと思ったんです」

　そして200m決勝、序盤は鶴田玲美（南九州ファミリーマート）に先行されたが、ラストの直線で追い上げ、ゴール間際で逆転。0.04秒差で競り勝ち、約1年ぶりに自己ベストを0.01秒更新する23秒16（＋0.8）をマーク。2年連続で短距離二冠を達成した。

　そのレースはまさに、彼女の今大会のテーマであった「執念の走り」であり、国内スプリント女王の矜持を感じさせるものだった。

「100mと200mのどちらも出場することは海外選手のセオリーでもあり、世界と戦っていく上でも大事なこと。100mの実力があってこそ、200mでも勝てると思っているので、そこは自信を持って臨むことができました」

【次ページ】　「世界には30代後半でトップの選手もいる」