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プロ野球PRESSBACK NUMBER
戦力外通告に「やっとか…」大谷翔平の“ドラ4同期”はなぜ野球を続けなかった? 宇佐美塁大29歳が明かす「大谷世代」引退後の意外な現在
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byNumberWeb
posted2024/06/28 11:02
現役引退後は、広島市内でバーを経営しながら、野球教室も行っている宇佐美塁大さん(29歳)
大谷の結婚は「想像できなかったから意外で」
故郷の広島に戻った宇佐美さんは、飲食店でのアルバイトを経て2019年、市内一の歓楽街である流川にバーを開店した。コロナ禍で店を閉めた時期もあったが、移転して再スタートを切り現在は忙しい毎日を送る。昨年夏には、夫人と21年に誕生した長女と3人でロサンゼルスに新婚旅行に行き、エンゼルス戦を観戦するという夢を叶えた。
「(大谷に)メールで連絡して試合のチケットをとってもらいました。ただその時、翔平は脇腹を痛めていて会えなかったし結局試合にも出なかったんです。監督が『明日は出る』って言っていたからバッターなら見られるかと期待していたら……。まだ僕は試合見ちゃいけないってことか。もっと勉強してから来いやってことかな、と勝手に思っています(笑)」
今年2月、大谷が結婚を発表した際にはお祝いのメールを送ったという。「びっくりしました。(大谷が)結婚とか、想像できなかったから意外で」。自身も来月には長男が生まれ、4人家族になる。18歳同士、鎌ケ谷で初めて顔を合わせたあの日から時は流れた。ともに今年30歳、それぞれの人生は彩を添えながら大きく変化している。
バッティングセンターで野球教室を開く現在
宇佐美さんはバーの経営と共に、野球教室を開いている。広島市内のバッティングセンターを間借りして小中学生を対象に週3回、野球の技術を指導している。その傍らで、人知れず取り組んできたことがある。それはプロ野球人生の間長らく自身を悩ませてきたスローイングの“イップス”の克服だ。
「スローイングのことに関しては心を閉ざしながら生活していましたけど、そんな人生で終わりたくないな、と思って。それだけは人生の中で絶対に直したいと思ったんです。自分で勉強したり、人に聞いたり、場所を見つけて練習をしてみたりして。試行錯誤する中で現役の時にはわからなかったことにも気づいて、今は普通に投げられるようになりました」
辛いことの方が多かった5年間のプロ野球生活も、今は冷静に振り返ることができる。
「当時は自分のことで精一杯で、人の意見も聞き入れないようなタイプだったんです。自分のやり方を曲げないことも大事ですけど、それだけだと“天井”があるんだ、と今になれば思う。あの時もっと柔軟に考えられていたらもっと違った運びになっていたかも知れないです。ただ、僕が凄く悩んで経験したことは無駄にしたくはない。野球をやる子供達の中にも同じように悩んでいる子がいたら力になってあげたいし、うまく教えてあげたい。一人でも多く野球を好きになってくれれば嬉しいなと思います」
今後はさらに幅広く、野球に関わる機会を増やしていきたいという。
海の向こうで活躍を続ける大谷翔平は、今もなお「遠くて近い」存在だ。
「MVPもホームラン王も彼にとっては別に普通のことだと思う。僕も凄いとは思っていないです。やってもおかしくないと思っているから。大谷翔平は僕の中ではいつまでも勝手に追いかけたいと思わせてくれる存在です。少しでも近づきたいし、自分もその存在に恥じないように、じゃないけれど、何かで輝けるようにしたいといつも思っています」
《インタビュー第1回も公開中です》