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「過去最高のピッチャーじゃないかと」五十嵐亮太が語る37歳ダルビッシュ有の進化“しょんべんカーブ”から日米200勝投手へ「ダルビッシュが凄いのは…」
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph byAFLO
posted2024/06/23 11:02
日米通算200勝を達成したダルビッシュ有37歳。その進化のプロセスとは…
ところが2010年代に入りダルビッシュがMLBで活躍し始める頃には、トラックマンやホークアイなど分析する機械が次々に生まれ、ピッチングの世界は日進月歩で変わっていった。今や変化球一つにしても、投げたいボールがあれば、どの角度でどういうスピンをかければいいかということが数値として示されています。
「答え」がない中で、感覚を探りながら導き出してきた時代から、「答え」があらかじめ示されている中でそれをどう再現するかという時代へ。ダルビッシュは、元々変化球を投げるのが大好きな投手ですから、こういったデータもいち早く活用し、自分が必要な情報をスマートに、どんどん取り入れていったと思います。
「答え」が出ているから簡単かというとそうじゃない。マニュアル通りやれば身につけられるわけではなく、その先は再現性とか感覚の部分が非常に重要になってきます。データには“その先”があって、ダルビッシュは見つけた「答え」をどうやって自分の技術に落とし込むのか、さらに良くするにはどうすればいいかを導き出して、その先にある新しいものを見つけることまでできる。感覚が凄く敏感で、発想力やイメージする力が豊かなのだと思います。
ダルビッシュが凄いのは“縦”にも“横”にも曲げられること
彼の変化球はとても多彩でそのどれもが一級品ですが、一番得意なのはスライダーでしょう。スライダーやカットボールなど横曲がりのボールが得意なピッチャーは大体、逆方向への曲がりとなるシンカーやツーシームなども得意ですが、一方でカーブや縦スラなど縦に綺麗に変化する球種は意外と苦手なものです。横の変化と縦の変化では体の使い方やコントロールが違うため、その両方を投げようとするとフォームに悪影響を及ぼしたり、どこかでズレが生まれてしまう。
でもダルビッシュは横変化も縦変化も綺麗に投げ分けられるんです。フォームに違いが出ることもなく、リリースポイントも一定で縦にも横にも斜めにも曲げられる。これは凄いことです。彼自身の器用さという資質もあるでしょうが、それ以上に時間を費やして試行錯誤し、指先の握りの感覚や意識といった細かいところまで常に考えているという努力の証でしょう。