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「過去最高のピッチャーじゃないかと」五十嵐亮太が語る37歳ダルビッシュ有の進化“しょんべんカーブ”から日米200勝投手へ「ダルビッシュが凄いのは…」
posted2024/06/23 11:02
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph by
AFLO
まるでプレイングコーチのようなダルビッシュ
今春パドレスのキャンプを取材に訪れたとき、ダルビッシュのある行動に驚きました。自分の練習をひと通り終えた後に、ライブBPで投げていた若手投手のピッチングをわざわざ見に行っていたんです。そろそろ自分のウエートトレーニングに戻るかな、と思うと今度はブルペンで投げているピッチャーに下半身の使い方を教えている。自分の時間を削っても後輩たちの練習を見守り相談を受けているその姿はまるで、頼もしいプレイングコーチのようでした。
昨年のWBCでは宮崎キャンプにいち早く合流し、日本代表の若い選手たちにアドバイスを送ったり食事会を開いたりしたことが注目を集めました。あれは日本代表だから、WBCだから、というわけではない。所属のパドレスでも日常的に後輩たちに惜しみなく技術や考え方を伝え、彼らからとても慕われている。日本人投手がメジャーのチームでそういう存在となっていることは本当に素晴らしいと思います。
過酷なメジャーリーグのシーズンを戦うために、自分のトレーニングやシーズンに向けた準備だけに集中していた方が楽かもしれない。そこを犠牲にしても、若い選手が育ってくれるよう、チームがいい方向に進めるように、と行動する姿には感心します。野球選手としても一人の人間としても、凄く魅力的な存在だと改めて感じました。
行動の原点は「探究心」
彼の野球人生を振り返ると、道を切り拓いてきた最大の武器は、こういった行動の原点にある「探究心」ではないかと思います。ピッチングを進化させていくことに対して、常に努力を怠らない。わからないことや身につけたい技術があれば後輩だろうが先輩だろうが尋ね、くまなくリサーチして情報を自分の中に取り入れる。その上で取捨選択しながら、自分の技術に落とし込んでいくという部分が凄く上手い。
時代の変化という点で言えば、僕がメジャーでやっていた頃、ちょうどダルビッシュが高卒でNPBに入った2000年代は、投げたいボールや変化球があれば、指導者や先輩など人づてにたずね感覚を伝えてもらったり、写真や映像を見て研究する。それを実際にやってみて、数をこなした上で自分に合うかどうか判断していたという時代でした。