Number Web MoreBACK NUMBER
伊藤匠は「夢を半分実現してくれた」かつてのライバル、学生名人・川島滉生が語る“幼なじみ”への思い「たっくんは全てを将棋にささげていた」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKeiji Ishikawa(L)、Yuki Suenaga(R)
posted2024/06/24 06:00
竜王戦で初のタイトル戦挑戦となった伊藤匠。その伊藤と幼少期、しのぎを削った学生名人・川島滉生さんに話を聞いた
「20~21歳になるタイミングでまず到達したっていうのは、彼にとっても大きなことだと思います。それはかつてのライバルであり友人として、すごく嬉しいことだなって思います。ただ、彼にとってタイトル戦に出るというのは一つの通過点で、目標はもっと上にあるはず。きっと彼は今後、タイトル戦などに数多く出るでしょうし、将来的な部分も含めて、最初の舞台としていい経験をしてほしいというか。そのうえで最初の相手にしてはなかなかキツい相手ですけど(笑)、逆に言えばこれ以上キツい相手はいないのではないでしょうか。この大舞台、竜王戦七番勝負をいい経験にしてもらいたいという思いはありますね」
昔の自分を〈今のたっくん〉に重ねているかもしれません
若い絶対王者である藤井について、川島さんは“キツい相手”と評した。それはかつての伊藤少年、将棋に向き合うプライドを築き上げてくれた「たっくん」の存在を想起するものなのかもしれない。
川島さんは微笑みながら、同学年2人の現在地と未来を想像してもいた。
「そう考えると……将棋を始めた頃の川島少年を〈今のたっくん〉に重ねているかもしれませんね。明らかに今はタイトル数などで藤井八冠と上下関係があるわけじゃないですか。それに対して、伊藤挑戦者がどう尻尾をつかんでいくのか。今後の追い上げに、注目していきたいという点は確実にありますから」
<「少年時代」編とあわせてお読みください>
川島滉生(かわしま・こうせい)
2002年神奈川県生まれ。攻玉社高等学校卒。5歳で将棋を始め、「三軒茶屋将棋倶楽部」で腕を磨く。2018年、高校1年で全国高等学校将棋選手権大会男子・個人の部を優勝。2022年、第78回学生名人戦を優勝し、第16回朝日杯将棋オープンではプロ相手に2連勝。早稲田大学へと進学し、将棋部の主将を務めた