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172cmの長身&女性誌でモデル挑戦、関西名門大で学生日本一、クラシックバレエ経験も…今季絶好調の女子陸上・田中佑美(25)は何がスゴい?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2024/05/31 17:01
12秒台ハードラーがひしめく群雄割拠の日本女子ハードル界で今季ここまで日本人に負けナシの田中佑美。急成長の秘密はどこにあるのか
今年の織田記念のレース後に話していたのは「スタートが格段に良くなった」ということだった。
実は、田中はスタートに対してかなり苦手意識があった。高校時代には、アジアジュニア選手権でフライングし失格になったことがあった。さらには、昨年のアジア大会でフライング騒動に巻き込まれたことも苦手意識をもたらしていた。
「スタートも遅いし、リアクションに対しても苦手意識があったので、練習でもできるだけ周りの方に手を鳴らしていただいて出るようにしていました。そこが良かったのかな」
しかし、その進化ゆえにセイコーGGPでは逆にスタートの局面に課題を残した。
スタートから1台目のハードルまで田中は8歩で刻むが、この8歩に微妙な狂いが生じたのだ。
「スピードがかなり出てきているので、今まで通りの8歩のリズムでいくと詰まってしまう。8歩を、3歩、2歩、3歩で分けて考えているのですが、真ん中の2歩のところで力を加えすぎて間延びしてしまい、1台目からうまくスピードに乗れませんでした」
単にフィジカルを強化すればいいわけではなく、それに見合った精密な技術が求められるのがハードルという種目。その奥深さを感じさせる田中のコメントだった。もちろんここから修正を加えてくるはずだ。
パリ五輪へ…日本選手権「3位以内」が必須
日本選手権は、日本記録保持者の福部や昨年の覇者・寺田、青木益未(七十七銀行)らもおり、激戦は必至。田中はパリへの切符を掴むために「3番以内」を目標に掲げる。
昨年はブダペスト世界選手権に出場したが、その舞台で味わったのは無力感だった。
「初めての世界選手権で怖気付いてしまい、攻めるはずが守りの走りになってしまった。良いところが何もなかった」
その雪辱を果たすため、日本選手権では確実に五輪の切符をつかみにいく。