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172cmの長身&女性誌でモデル挑戦、関西名門大で学生日本一、クラシックバレエ経験も…今季絶好調の女子陸上・田中佑美(25)は何がスゴい?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2024/05/31 17:01
12秒台ハードラーがひしめく群雄割拠の日本女子ハードル界で今季ここまで日本人に負けナシの田中佑美。急成長の秘密はどこにあるのか
女子100mハードルは、中学規格が高さ76.2cm、ハードル間は8.0mなのに対し、高校生からの一般規格は高さ84.0cm、ハードル間は8.5mとなる。中学時代から長身だった田中にとって、中学までは恵まれた体躯がかえって枷となっていた。高校生になってハードルが高くなりハードル間が広くなったことで、ようやく田中の本領が発揮されるようになったというわけだ。
立命館大学時代にも大学日本一となり、2021年4月からは実業団の富士通に所属。社会人になってからは、筑波大学を活動の拠点とし、男子110mハードルの元日本記録保持者で、五輪に2度出場した谷川聡氏に指導を受けている。
社会人1年目はなかなか結果を残せなかったものの、谷川氏の理論的な指導を吸収し、次第に結果が伴うようになった。
飛躍を遂げた社会人3年目の昨シーズン
そして、社会人3年目の昨シーズンに飛躍を遂げた。
今年と同じように大粒の雨に見舞われた織田記念で12秒97をマークし、日本人4人目の12秒台ハードラーとなった。ただ、それ以前の自己記録は13秒12にすぎず、意外にも「12秒台が出ると思っていなかった」と言い、意図せず出てしまった12秒台だった。
さらに、翌月のセイコーGGPでは12秒89まで記録を伸ばした。だが、この記録に関してもこう振り返る。
「セイコーGGPでベストを出したときは、寺田明日香さん(ジャパンクリエイト)に付いていって、同じリズムで頑張って走ろうとして出た記録」
いわば、他人の力を借りて「出てしまった」記録だった。
しかし、今年は違う。「自力でそれぐらいは出せる」という手応えを持って新シーズンを迎え、その通りの結果を残している。