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オリンピックPRESSBACK NUMBER
亡き父との約束から9年…柔道・斉藤立の母が明かす、思春期の息子を“立派な柔道家”に育て上げるまで「兄弟ゲンカの仲裁に包丁を持つことも…」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJIJI PRESS
posted2024/05/16 11:02
2022年全日本柔道で初優勝を果たし、母・三恵子さん(右)との記念撮影で笑顔を見せる斉藤立
仁さんが生きていたらオリンピックの経験者、先輩として聞きたいこともたくさんあっただろう。
「『お父さんがおったら聞きたいこといっぱいあるよね?』っていったら『それなー』と話していました。今だったら主人が当時言っていたことももっと理解できると思うんです。『あ、こういうことだったのか』って。だから残念と言えば残念だけど、主人がいなかったからこそ成長できたのかもしれません」
首を振りながら歩いて畳に上がり、両手を大きく上げて挑んでいく姿は仁さんを彷彿とさせる。父譲りの柔らかな身のこなしと豪快なスタイルだと、仁さんを知る人たちから言われることも増えた。
「顔自体はあまり似ていると思わないんですが、見る角度によっては私も“うわっ”と驚くことがあります。手の形や足の形、太もものフォルムが気持ち悪いぐらいそっくり。あと意外と繊細なところもよく似ているんですよ」
特に仁さんの得意技だった体落としをかけている写真を見比べた時、三恵子さんは「足の角度がほぼ一緒」と驚いた。
「主人にしか見えないと思うときもあるんです」
最近は、その姿がより仁さんと重なって見える。
「やっぱり親子なんですね。遺伝子ってすごいなと」
柔道界最強のDNAを受け継ぐ22歳。亡き父と、成長を見守ってくれた母、そして戦友でもある兄に、パリで恩返しを誓う。
(前編から続く)