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誹謗中傷は「見ないようにしています」…“日本最速女子大生”だった道下美槻(22)がそれでも「SNSのプラス面に目を向けたい」と語るワケ
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by(L)Nanae Suzuki、(R)AFLO
posted2024/05/09 11:04
今年の4月から積水化学に入社した女子陸上の道下美槻。立教大学時代は関東インカレ800mで優勝するなど中距離を軸に活躍
その意味では、中長距離に特化したコーチが在籍し、新谷仁美(積水化学)や卜部といった日本トップ級のランナーが研鑽を積みながら、かつ個々の選手のスタイルを尊重する「TWOLAPS」という組織でのトレーニングを、大学での練習にプラスするのは理想的でもあった。
結果的にこの選択を経て、道下の走力は一気にレベルアップする。
大学2年時には5月に800mで関東インカレを制すと、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジの1500mで4分12秒72の学生新記録をマーク。翌3年時には、念願だった6月の日本選手権1500mで3位と初の表彰台に輝いた。
「学生記録もめちゃくちゃ狙っていたわけではなくて、意外と楽に出た感じでした。日本選手権も『表彰台に上がりたいな』とは思ってたんですけど、本当に結果を残せて。もっともっと上に行きたい……そんな風に思うようになりました」
順風満帆の大学陸上生活も…暗転は4年目に
そんな順風満帆に見えた道下の大学陸上生活に暗雲が立ちこめ始めたのは、4年生になった頃だった。
「記録も出して、日本選手権でもメダルを獲れて、どの大会でも“学生記録保持者”という肩書がついて回るようになりました。優勝候補に名前を挙げてもらうことも増えました。そんな中で大学4年生だと、学生の試合は全部がラストになってくる。実はそこまで学生のレースで勝ったのって、2年生の時の関カレの800mだけだったんです」
実績を積んだことで、特に学生相手の試合では負けられないプライドが生まれた。
出るレース、出るレースで「勝たなきゃいけない」と自分で自分を追い込んだ。そんな中で、ようやく楽しくなった陸上競技が「周りの選手や過去の自分と比べるように」なってしまったという。
4月のユニバーシティゲームズ代表入りを目指した学生個人選手権の1500mでは、最後に競り負け3位。レース直後にはトラック上で涙を抑えられなかった。