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誹謗中傷は「見ないようにしています」…“日本最速女子大生”だった道下美槻(22)がそれでも「SNSのプラス面に目を向けたい」と語るワケ
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by(L)Nanae Suzuki、(R)AFLO
posted2024/05/09 11:04
今年の4月から積水化学に入社した女子陸上の道下美槻。立教大学時代は関東インカレ800mで優勝するなど中距離を軸に活躍
この年最大の目標に据えていた9月の日本インカレ1500mも、途中棄権という結果に終わる。
「応援してくれるファンの方も増えたなというのはすごく感じていて。その人たちの『期待に応えなきゃ』という……そんな風に考えてるつもりはないんですけど、心のどこかでそういう気持ちもあったんだと思います」
道下が練習を積んでいた「TWOLAPS」というチームは、新しい陸上競技の在り方を模索しているクラブチームという側面もある。これまでの陸上競技のイメージとは異なり、ファンとの距離が近いイベントも多い。SNSでの発信も、メンバーもスタッフも積極的に行う。そんな中で道下の存在も多くのファンに知られるところとなっていた。
SNSは「『応援してるよ』と言ってくれる人を信じよう」
そして、結果がでなければファンからの厳しい声も目に入るようになった。そういった声は、道下の「負けられない」という感情を嫌でも加速させるものだった。
「ただ、SNSとかでの厳しい声は、途中からもう見ないようにしました。一度でも目にすると落ち込んでしまうし、でもそうやって悪いことを言ってくる人よりも、『応援してるよ』と言ってくれる人の方が絶対数は明らかに多いわけで。じゃあそっちを信じてみようと。
そんな経緯もあって、卒論も『ファンがアスリートに与える影響』みたいなテーマで書いたんです。田中さんにインタビューさせて頂いて、ファンの声援がいかに後押しになっているかを聞いたりしましたね。だから仮に競技面で苦しい状況でも、私自身はSNSは使い方次第でプラスの影響は得られるツールだと思っています」
実際にスランプに陥っていた道下を救ったのも、そんな「周囲の声」だった。
<次回へつづく>
(撮影=鈴木七絵/文藝春秋)