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誹謗中傷は「見ないようにしています」…“日本最速女子大生”だった道下美槻(22)がそれでも「SNSのプラス面に目を向けたい」と語るワケ
posted2024/05/09 11:04
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph by
(L)Nanae Suzuki、(R)AFLO
今年4月、1500mでの学生記録を引っ提げ、立教大から名門実業団の積水化学に入社した女子陸上競技の道下美槻。中高時代から全国大会の経験はあったが、大学時代にさらに急成長。名実ともに「学生最速ランナー」だった道下だが、所属していた立教大は決して陸上の強豪校というわけではなかった。異例の進路を選んだ彼女は、なぜ大学で急成長を遂げたのか。<NumberWebインタビュー全3回の2回目/つづきを読む>
高校での競技生活を不完全燃焼のままに終え、新たな志の下で立教大に入学した道下美槻を待っていたのは、コロナ禍という予想外の事態だった。
「せっかく大学に入学したのに授業もほとんどがオンラインで。同じ学部の友達とかもできなくて、思っていたキャンパスライフとは全然、違っていました」
そう本人は苦笑しながら振り返る。
コロナ禍での環境面がプラスに作用?
一方で、そんな閉鎖的な状況が皮肉にも競技面ではプラスに働いた側面もあった。
「コロナ禍の中で試合もなくなってしまって、しばらく練習しかできなかったんです。でも、そうなると自分で考えざるを得ないというか。『いまの自分に足りないものはなんなんだろう』というのを能動的に考えるようになりました」
立教大では選手自身が練習メニューを立案し、合宿の企画まで自分たちで行う。強豪校では考え難い環境ではあるが、その分、当事者意識が強くなるメリットもあった。
「そういう経験を経る中で、どんな練習が自分に向いていて、どんなスタイルが必要なのか少しずつ分かるようになってきました」
高校時代は結果を求めるあまり、知らず知らずのうちに受け身でトレーニングを積むことに慣れてしまっていた。それが大学入学後のコロナ禍の中で、競技と向き合う時間が増えた。結果的に、自ら考えて動かざるを得なくなった。
そうして自発的な練習をし始めると、不思議と面白いように記録が伸びはじめた。高校時代にあれだけ悩まされた嘔吐癖も、いつの間にか出なくなっていた。