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爆発的としか言えない“衝撃のKO劇”…フェザー級王者・鈴木千裕と朝倉未来、平本蓮の交錯はあるか?「実力の順列がすべてではない」RIZINの価値観
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/05/01 17:02
パンチのコンビネーションで金原正徳を攻め立てる鈴木千裕
爆発的としか言いようがない“衝撃のKO劇”
試合は金原の「渾身のテイクダウン」を鈴木がディフェンスするところから始まった。金原がグラウンドに持ち込むか、鈴木が打撃を当てるか。フェイントをかけながらローキックを当てていったのは鈴木。読み合いの中で左ボディをヒットすると左フック、そして左右の連打でたたみかける。
ダウンした金原も下からの腕ひしぎ十字固めを狙うが、鈴木はすぐに引き抜いて追撃のパウンド。連打はストップ用バトンが投げ込まれるまで止まることがなかった。
1ラウンド4分20秒、TKO。結果として川尻の言葉は正しかった。まさに時代を担うにふさわしい勝利だった。
爆発的としか言いようがないKO劇の後で、しかし鈴木は冷静に試合を振り返っている。
「左ボディがキーポイントでした。あれで(金原の)動きが止まって目つきが変わった。全体ではポイントが3つでしたね。カーフ(キック)でチャンスを作ったこと。ボディ、それと腕十字にきれいに対処できたこと。あそこで腕を取られてたら負けてました」
鈴木の言葉にかつての五味の姿が重なった
鈴木の言葉を聞きながら、思い出したのは五味のことだ。たとえば2005年大晦日のPRIDEライト級GP決勝戦。対戦した桜井“マッハ”速人について「3分すぎにガードが落ちる」と分析した五味は3分56秒でKOしている。
PRIDEにとっての五味がそうだったように、RIZINにとっての鈴木もイベントの軸になる存在だ。金原に勝ち、鈴木は日本格闘技の歴史に対する責任を果たしたとも言えるだろう。
「一つ時代が変わったのかなと思います」
そう語った鈴木。ただ「求めてる景色はここじゃない。まったく満足してないです。世界に連れて行きたいので」とも。
では理想とする景色とはどんなものなのかと聞くと、今はまだ分からないそうだ。
「勝てばすべて変わる。勝ってから見える景色があると思うので」
彼はアゼルバイジャンにフットサル場を作る活動を始めたという。アゼルバイジャンでタイトルマッチに勝ち、現地の子供たちに夢を聞いたことから動き出した。
「(地震の被害を受けた)能登でのチャリティーイベントもそうです。格闘技を通して何ができるのかがテーマで。勝つことによってこれができるんだなとか、子供たちに夢を見させることができる。世の中がいい方向に向かっていくようにしたいし、格闘技で僕ができることを見つけていきたいです」