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大阪桐蔭でセンバツ優勝→まさかのドラフト“指名漏れ”から2年…涙の元エースの現在「自分がここに来たことは絶対に間違いじゃない」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by(L)Yu Takagi、(R)Nanae Suzuki
posted2024/04/29 11:07
ドラフト指名漏れ後は社会人野球のHonda鈴鹿に進み、成長著しい川原嗣貴。センバツ優勝の高校3年時を上回る投球を見せている
プロスカウトから称賛の声が
JABA大会は優勝チームに、社会人野球の2大大会のひとつである日本選手権出場権が与えられる重要な大会だ。そのため川原は「起用してもらった思いを汲み取りました」と奮起してマウンドに上がると7回4安打1失点と期待に応えて勝利に貢献。「流れを呼び込めて良かったです」と笑顔を見せた。
この試合、バックネット裏のNPB球団のスカウトからは、賞賛の声が並んだ。
「球が強く、良い角度で入ってくる」
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「踏み出した足が着くまでに独特の間があり、タイミングが取りにくい」
「球速表示よりも速く感じる」
そのどれもが、数値だけではない投手としての資質への高い評価だった。特に身長189センチから最速150キロを投じる大型右腕でありながら制球力の良さが目を引く。前述のパナソニック戦では2四球、エイジェック戦では無四球で社会人野球の巧打者たちを抑えた。
若さ溢れる球の勢いと、何年もこの世界で経験を積んだような大人の投球が共存している。
エイジェック戦の序盤は「省エネで、指先だけの力で球をベース板に強く通すイメージで投げました」とストレートの球速は140キロ前後。4月にしては暑い汗ばむ陽気の中で、後半に余力を残す投球を心がけた。
そして7回、先頭打者に二塁打を打たれ無死二塁のピンチを迎えると、明らかにギアを上げた。この日最速となる149キロを計測するなど力強さを増したストレートに変化球を織り交ぜ、犠飛による1失点のみに留めて、この回を投げきり、8回からは先輩投手にマウンドを譲った。
「(ギアを入れたのは7回?)そうですね。7回ですね。でも力を入れるならゼロに抑えないといけない。そこが今日一番の反省点で悔しいです。でもチームが勝つことが最優先です」