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大阪桐蔭でセンバツ優勝→まさかのドラフト“指名漏れ”から2年…涙の元エースの現在「自分がここに来たことは絶対に間違いじゃない」 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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photograph by(L)Yu Takagi、(R)Nanae Suzuki

posted2024/04/29 11:07

大阪桐蔭でセンバツ優勝→まさかのドラフト“指名漏れ”から2年…涙の元エースの現在「自分がここに来たことは絶対に間違いじゃない」<Number Web> photograph by (L)Yu Takagi、(R)Nanae Suzuki

ドラフト指名漏れ後は社会人野球のHonda鈴鹿に進み、成長著しい川原嗣貴。センバツ優勝の高校3年時を上回る投球を見せている

 コメントの随所にチームや会社への愛と感謝が滲む。

「2022年に悔しい思い(指名漏れ)をして複雑な気持ちが大きかったのですが、自分がこの鈴鹿に来たことは絶対に間違いじゃないと思っています。自分を成長させてくれる場を作ってくださっているのも鈴鹿です。会社の皆さんのためにも、自分のためにもプロ野球に行きたいんです」

 感謝の気持ちが強いからこそ、昨年に出場を逃した都市対抗と日本選手権には、自分が先頭となって連れて行こうとしている。

 1年目で取り組んだことの成果ゆえの自信も支えとなっている。「ベース板を通る時の球の強さがついて、ストレートでファウルや空振りが取れるようになったことは大きいです。そうすると必然的に変化球のキレも良くなる。縦に落ちる変化球が特に良くなりました」と手応えを明かす。ストレートの軌道に近いツーシームも新たに習得した。

 そんな頼もしさを持つ19歳の大型右腕について、指揮を執る久芳修平監督も「今年からアピールしていきたいという思いがひしひしと伝わってきます」と目を細める。技術面でも「ストレートが重い球質になりましたし、角度があって球持ちが良いので相手打者に差し込める。コントロールもさらに良くなり、変化球でもストライクが取れます」と成長を称賛する。

「会社のバックアップや温かさを感じている」

 試合後、Honda鈴鹿の選手たちは三塁側スタンドの出入り口付近に立ち、応援に来てくれたファン一人ひとりを見送った。

「いろんな会場に応援に来てくださる方もいますし、会社のバックアップの大きさや温かさを感じているので、不甲斐ない投球はできません」

 その自覚と責任は既にエースの名にふさわしいものだ。

 だが、ここで満足する気は毛頭ない。熾烈を極める社会人野球の世界で1つでも多くの白星をチームに届けることが目の前の目標だ。そして、あの日の悔し涙を晴らすために、鈴鹿に来たことの正しさを証明するために。さらなる高みを目指し、川原は腕を振り続ける。

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