JリーグPRESSBACK NUMBER
黒田剛監督の“引き締め”で首位返り咲き…町田ゼルビアの「プレーが荒い」は真実か? むしろ注目したい“本当の強み”「スペクタクルはないが…」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2024/04/23 17:27
FC町田ゼルビアを率いる黒田剛監督。就任から現在に至るまで、リーグ戦での連敗は一度もない
黒田監督が振り返る。
「望月は攻守にわたってスピードを生かすことができる。自分の道が空いたときには、恐ろしいぐらいのスピードを出す。彼が走り出すタイミングも、フィードをしたイボの精度も良かった。セフンにはマイボールになった時点で、100パーセントでゴール前へ入っていけ、躊躇するなと言っている。意図しているものが噛み合った得点でした」
この日はチャン・ミンギュがメンバー外だった。藤尾と平河はU-23日本代表として、パリ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップに挑んでいる。開幕からスタメンに定着していたボランチ柴戸海は、累積警告で出場停止だった。
さらに言えば、昨シーズンのJ2優勝に貢献したブラジル人FWエリキが、昨年8月から長期の戦線離脱を強いられている。主力級の不在で勝利をつかんだことについて、黒田監督は「残された選手たちで勝点3を取れたことは、すごく価値があると思います」とチームのパフォーマンスを評価したが、指揮官のチーム作りが呼び込んだ勝利だろう。一貫性のある戦術をピッチに立った選手がやり切ることで、町田は勝点を積み上げているのだ。
合言葉は「連敗だけは絶対にできない」
J2で26勝9分7敗の成績を残した昨シーズン、町田は一度も連敗をしなかった。リーグ戦を戦い抜くための必要条件が、黒田監督の就任によってチームの意志となった。ヴィッセル神戸戦の敗戦を受けて迎えたFC東京戦後、指揮官は言葉に力を込めて語った。
「連敗だけは絶対にできないというのは、我々の合言葉です。去年も連敗せずにJ2優勝を手繰り寄せた経験から、連敗すると一気に崖から転がり落ちる。転がったら早いぞ、と。上に食らいついていく目標を掲げてスタートした以上、そこに対して執念を持ってしっかり全うしてほしい、と選手たちに話していました」
町田のサッカーから、スペクタクルを感じることはない。それでも、対戦相手を肉体的にも精神的にも追い詰めるサッカーは、このチームの立ち位置を特別なものにしている。平凡なプレーを非凡なレベルで徹底する彼らに、スランプはないのだ。