JリーグPRESSBACK NUMBER
黒田剛監督の“引き締め”で首位返り咲き…町田ゼルビアの「プレーが荒い」は真実か? むしろ注目したい“本当の強み”「スペクタクルはないが…」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2024/04/23 17:27
FC町田ゼルビアを率いる黒田剛監督。就任から現在に至るまで、リーグ戦での連敗は一度もない
このチームのサイドアタッカーは、推進力が高い。縦への突破とカットインを使い分け、相手DF陣を後退させていく。
平河や藤本の仕掛けが相手守備陣にストレスをもたらすのは、町田が他チームにない強みを持っているからでもある。
ロングスローだ。
右SBの鈴木準弥、左SBの林幸太郎が、敵陣中央あたりからでもペナルティエリア内へボールを投げ込む。オ・セフンと藤尾に加えて186センチの「イボ」ことイブラヒム・ドレシェヴィッチ、183センチのチャン・ミンギュの両CBがターゲットとなる。FC東京戦では192センチの大卒ルーキー望月ヘンリー海輝が右SBでスタメン起用され、彼もターゲットとなった。
今シーズンここまで攻撃の交代カードとして使われているオーストラリア代表FWミッチェル・デュークも、186センチの高さを持つ。FC東京戦でチャン・ミンギュに代わって先発した昌子源も、182センチだ。さらにはCBの序列4番手の池田樹雷人が、186センチである。高さは何重にも担保されている。
ロングスローは守備側にとって不確実性が高い。ファーストボールに競り勝っても、セカンドボールを拾われてもう一度クロス対応を迫られる、CKに逃げるしかない、といった場面も起こりうる。町田にロングスローを入れられたくない相手は、自陣ではタッチに逃げたくないとの心理を抱く。平河や藤本らのサイドアタッカーからすれば、思い切って仕掛けることができるわけだ。
FC東京戦でも見せた“デザインされたセットプレー”
FKも距離を問わない。敵陣で得ると、長身CBが相手ゴール前へ飛び出していく。
リスタートはキッカーも大事だ。こちらも人材を揃えている。ロングスローを投げる鈴木が担い、彼が不在だったFC東京戦はレフティーの髙橋大悟が務めた。右足なら仙頭啓矢、左足なら下田北斗やバスケス・バイロンもキッカーに名を連ねる。長身選手とキッカーを用意し、黒田監督とスタッフがセットプレーを入念にデザインする。
2対1で勝利したFC東京戦では、CKから先制点をあげた。
左CKをファーサイドへ持っていき、ナ・サンホがワンタッチボレーで蹴り込んだ。長身選手を中央へ集めた背後で、韓国人FWをフリーにするデザインがゴールにつながった。
25分の2点目も、チームの強みを存分に発揮したものだった。ドレシェヴィッチが右CBのポジションから前方へフィードすると、右SB望月がゴールラインぎりぎりでクロスを入れる。ニアサイドへ飛び込んだオ・セフンが、ダイビングヘッドを突き刺した。