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「決断は2日前」筒香嘉智32歳が明かす横浜DeNAベイスターズ復帰の舞台ウラ…巨人入り報道で“裏切り者”呼ばわりも「少し嬉しかった」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/22 17:08
5年ぶりに古巣ベイスターズに復帰した筒香嘉智。会見で三浦大輔監督と握手を交わした
「ただジョエルはこれまでも様々な局面で、代理人というより友人のような感じで意見を言ってくれてきたし、彼の助言に逆らって自分の意見を通して失敗したこともありましたから……」
ウルフ氏の助言を受け入れ、日本の球団を含めた移籍先探しが始まった訳だ。ただ、当然のようにアメリカでプレーする環境はなかなか見つからなかった。一方で日本の球団はポスティング移籍後もずっとコンタクトをとってきたDeNAだけでなく、ここ数年、特に熱心にアプローチをしてきていた巨人や他のパ・リーグ球団などが獲得への動きを見せて“争奪戦”は日毎に激しさを増していく様相となっていった。そうして米国内での移籍が困難になるにつれ、筒香の頭の中でも日本でのプレーという選択肢が次第に大きくなっていくことになった。
そんな葛藤を経て、4月4日には日本でのプレーを決断して帰国。その動きを察知したスポーツ紙が移籍先の有力候補として報じたのが、古巣のDeNAではなく、開幕直前に新外国人選手のルーグネッド・オドーア外野手が退団して、大砲を探していた巨人だったのである。
入り乱れる巨人入り情報。一部スポーツ紙ではあたかも巨人入りが決定したかのように報じられたことで、ネットは荒れた。過激なDeNAファンからは「裏切り者」呼ばわりもされ、筒香に対する批判の声がコメント欄に溢れた。
しかし筒香はそんな批判を読んで、それはむしろべイスターズファンの期待の裏返しだと感じて「少し嬉しかったですね」という。
「実際に巨人入りが報じられたときも、まだ何も決まっていなかったですから。ちょうどその頃、獲得の意思を示していただいた球団から具体的な条件面のオファーをいただいている最中で、自分ではまだ何も決められていなかった時期でした。でも……」
5年前の渡米以来、考えたこともなかった日本でのプレー。マイナー落ちして、いくつもの球団を解雇され、独立リーグでプレーしている間も、常に考えていたのはメジャーでプレーすることだけだった。ただひたすらその目標を諦めずに胸の中にしまい込んでバットを振り続けた。
だからこそ日本の地に降り立って、改めて自分自身に自分が野球をやる意味を問い続けた。なかなか答えは見つからなかったが、やはり何度も、何度も思い返したのは、ベイスターズの一員として過ごした日々だった。
決断は2日前…選択は間違ってなかった
「最後は条件とかそういうことではなく、自分の気持ち、自分の意思で決めました」
提示された条件でも、タイラー・オースティン内野手が故障してポジションが空いたことでもなかった。