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松尾汐恩「開幕一軍入り」の真相、コーチは「一軍で打席をもっと見たい」「守備は…」本人が語る「一軍で生き残る覚悟」「戸柱恭孝への弟子入り」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/08 11:04
開幕一軍入りし、山本祐大、伊藤光、戸柱恭孝らと捕手のポジションを競う立場になった松尾汐恩。一体、そのスタートまでにどのようなことが起きていたのか
「失敗を恐れるな」
松尾は、その時のことを素直に振り返る。
「やっぱり、やらなきゃいけないってプレッシャーもあって気負っていた部分があったと思うんです。でも『自分はできへんもんや』と吹っ切れたことで、気持ちが楽になったというか、後半戦のいいパフォーマンスに繋がっていきました」
この世界を生き抜くために必要不可欠なのは、フィジカルやスキルばかりではなく、“割り切り”と“切り替え”をすることができるメンタルだ。
「キャッチャーというポジションは、誰よりも“切り替え”が大事だと思っているので、そこは今後も意識していきたいですね」
苦しみの末、松尾は等身大の自分を知ることによって潰れることなく、右肩上がりに成長を遂げてルーキーイヤーを終えている。
コーチが唸る「本当に素晴らしい才能の持ち主」
松尾の最大の魅力は、自他ともに認めるバッティングである。オープン戦ではチーム1号となるホームランを放つと、11試合に出場し打率.350という数字を残した。三浦大輔監督は「松尾の打力を買いました」と評価し、開幕一軍に抜擢している。
懐の大きい構え。投手のタイミングを読み、軸をぶらすことなく振り抜く鋭いスイング。そして速いストレートを意識しつつも、変化球を巧みに捉える適応力。シーズンに入ると、代打として2打席目となった4月2日の阪神タイガース戦で、同学年の門別啓人からプロ初ヒットを放っている。レフトオーバーの目の覚めるような弾道だった。
松尾のバッティングについて、鈴木尚典打撃コーチは次のように語る。
「松尾は本当に素晴らしい才能の持ち主だと思います。ボールを捉える感覚に加え、この1年でフィジカルの面も成長し、打球の速さや飛距離もアップしています」
成長速度の早さに鈴木コーチは唸った。
「松尾にかぎっては、バッティングに関して昨年1年間ほぼ触っておらず、本人の好きなように、感じたとおりにやらせてきたんです。自分で考えることのできる選手ですし、そこを更に伸ばしていってもらいたいですね。本当に近い将来、打てるキャッチャーとしてクリーンナップを担う存在だと思いますし、もっと一軍の打席を見たいと感じさせる楽しみな選手です」
プロに入っても変えなかった「スタイル」
松尾自身、プロの速く強いボールに対応するために始動を早めたり、鋭いスイングをするために体力増強に努めたが「基本的には高校時代と変わらないんです」と言う。