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松尾汐恩「開幕一軍入り」の真相、コーチは「一軍で打席をもっと見たい」「守備は…」本人が語る「一軍で生き残る覚悟」「戸柱恭孝への弟子入り」
posted2024/04/08 11:04
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
JIJI PRESS
高卒2年目にして初の開幕一軍入り。ファン待望の選出ではあったが、横浜DeNAベイスターズの捕手である松尾汐恩は、特に喜びの表情を見せることもなく、真剣な面持ちで言うのだ。
「とてもありがたいことですし、自分としては一軍でいろんなことを勉強していきたいと思っています」
やっぱりこの場所で勝負したい気持ちが…
3月29日に横浜スタジアムで開催された広島カープとの開幕戦、松尾は、布袋寅泰らが出演した光あふれるド派手なセレモニーの中に身を置いた。満員の観衆が詰めかけたハマスタで、どんな景色を見たのだろうか。
「すごかったですね。とにかく開幕戦は経験したことのない緊張感がありました。1年前とはまったく違う環境ですからね。また、たくさんの人たちに見てもらえると、自分の持っている力以上のモノを発揮できますし、詰めかけてくれたファンの方々には本当に感謝したいなと思いました」
19歳とは思えぬこの落ち着き。すると、松尾は若干口調を強め続けるのだ。
「昨年よりも冷静に周りを見ることができていますし、改めて開幕一軍を経験したことで、やっぱりこの場所で勝負したいという気持ちがより一層強くなりました」
2軍で好成績も「しんどかった」
昨年はイースタン・リーグで104試合に出場し、95安打、51打点、打率.277という高卒1年目としては十分すぎる成績を残すと、9月6日のヤクルト戦ではサイクルヒットを記録するなど非凡な才能を見せつけた。一見、順風満帆のようだが、実際のところは悪戦苦闘したルーキーイヤーだったと松尾は振り返る。
「初めのころは慣れないことばかりで、どうしたらいいのかわからないことも多かったですし、体と心の疲れもあって、夏場ぐらいまではしんどかったんです」
初めてのプロとしての社会生活。学生時代とは異なり、連日のように試合があることで肉体は徐々に疲弊し、思うようなパフォーマンスが発揮できない。また捕手という立場上、初めて接する投手をいかにベストなピッチングに導くことができるのか考え抜くことで心が削られた。そしてドラフト1位という衆目を浴びる立場。まさに“キャパオーバー”だった。
ファームの首脳陣からかけられた言葉
苦しみの渦中にいた夏の盛り、ファームの首脳陣に何度も言われていた言葉が自分を変えるきっかけになった。