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松尾汐恩「開幕一軍入り」の真相、コーチは「一軍で打席をもっと見たい」「守備は…」本人が語る「一軍で生き残る覚悟」「戸柱恭孝への弟子入り」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/08 11:04
開幕一軍入りし、山本祐大、伊藤光、戸柱恭孝らと捕手のポジションを競う立場になった松尾汐恩。一体、そのスタートまでにどのようなことが起きていたのか
「大事なのは自分の持っているスタイルを崩さないこと。細かい部分はあまり意識しておらず、来たボールに対して、待ちの姿勢ではなく自分から入っていくこと。あとはプロになって色んなピッチャーと対戦することで経験値が増えたということも大きかったと思います」
一方で、センスだけではクリアできないのが捕手というポジションである。自身のスキルだけではなく投手の能力を引き出すことはもちろん、チーム全体に目配り、気配り、心配りができなくてはいけない。
14歳年上の先輩の戸柱恭孝に弟子入り
松尾は捕手として成長するために、オフに先輩である戸柱恭孝に弟子入りをしている。この貪欲な姿勢。33歳のベテランに自主トレを願い出た理由を松尾は、「昨年一軍に昇格したとき(2試合帯同も出場なし)、試合での戸柱さんの様子はもちろん、チーム全体を見渡すことなど、野球以外の部分でも学べる部分が多く尊敬していたので、ぜひ一緒にやらせてもらいたいと思ったんです」と語る。
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申し出があった時の様子を戸柱は次のように教えてくれた。
「秋季トレーニングの早朝、(松尾)汐恩が近くに来たんで『どうしたん?』って訊いたら『いや……』って言って離れて行ったんです。あれ、おかしいなと思ったら、翌日に改めて『自主トレを一緒にお願いします!』って言われたんですよ。19歳の選手がベテランの選手にお願いするのは、すごく勇気のいること。だから、いいよって返事をしたんです。正直『今後レギュラーになり得る素質のある選手と一緒にやってどうするの?』という声もありましたし、自分がもし20代半ばだったら断っていたかもしれない。けど汐恩が成長することで、チームの味が変わるというか、キャッチャー陣の刺激になるし、僕自身さらに気が引き締まると思ったんで、受け入れたんですよ」
今日のことは忘れないように
戸柱との自主トレではウェイト・トレーニングから始まり、キャッチングやスローイング、ブロッキング、フレーミングなど徹底して量をこなし、捕手の技術に磨きをかけた。
「汐恩は呑み込みが早いんですよ。教えるとすぐできるようになる。ただ、次の日に忘れていることも多い。そこは若いなって(笑)。だから練習を終えても、食事や風呂で『今日のことは忘れないように』って何度も言ってあげて。まあでも僕自身、10代の選手と共に過ごす機会を得られて刺激になったし、一緒にやれて良かったですよ」