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「僕は忙しいんです。だから…」魁皇からのプロポーズ…元女子プロレスラー・西脇充子(56歳)が卵巣がんを乗り越え“大関の妻”になるまで
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/04/07 17:01
女子プロレスラーを引退し、現在は相撲部屋の女将として元大関・魁皇の浅香山博之を支える西脇充子
「僕は忙しいんです。だから…」プロポーズの意外な言葉
――一緒にいるときは、気づかなかった。
西脇 心にぽっかり穴が空いたときに電話がかかってきて、「寂しいですね」「会いたいですね」「東京に帰ったら会いましょう」っていう流れで……。
――プロポーズの言葉は何だったんですか。
西脇 「僕は忙しいんです。場所があって、巡業があって。だから、すべてを僕に合わせてほしい。それをしてくれたら、僕は絶対に裏切りません。離しません」みたいな、そういうこと。そういう人は初めて会ったので、この人は信用できるなって。私が合わせてあげないといけないって思ったので、麻布十番から錦糸町に引っ越して、業平にあった部屋まで自転車で行ける距離に移った。ただ、そのときはお付き合いしてる人ではあるけど、結婚とかはぜんぜん考えてなかった。
――それが、どう変化していったんですか。
西脇 初めて会ったのが、97年の9月4日。その丸1年後の98年の9月4日に、新聞に載っちゃった。ドーンと一面に、「魁皇、女子プロレスラーと交際」って。
――だから、年月日までを忠実に覚えているんですね。
親方への報告「おまえ、結婚すんのか?」「はい」
西脇 そう。もうびっくりして! 前日に記者から、「明日の新聞に載りますよ」って言われたらしく、あわてて電話がかかってきた。あわててた理由は、(先代友綱)親方が知らないからで、「記事が出る前に親方にあいさつに行かないといけないから、すぐに来てくれ」って言われて、初めて親方の前に連れていかれるのに、バタバタで。「明日こういう記事が出ます」って魁皇関が言って、「おまえ、結婚すんのか?」って聞かれたら、「はい」って答えるもんだから、「えーっ、聞いてないよ。私って結婚すんの?」って(笑)。あのとき、彼は震えてたの。親方に女性を紹介するのは初めてだったみたいで、「はい」って答えるしかなかったと思う。そこから結婚に向けて、ダダダーッて話が進んでいった。
――結婚は行事だ。
西脇 ホテルニューオータニの結婚式に出席したのは、560人ですよ。でも、思う。先代の親方は、よく結婚に反対しなかったなぁって。親方は、「こいつは守る者があったほうがいい。そのほうが強くなる」と踏んだみたいだけど、今思えば、あれがなければ私たちはどうなってたかわかんない。導かれるようにそうなっていったし、97年に出会って、98年に記事が出て、99年に結婚して。どんだけのスピードだよって(笑)。そっからは、相撲地獄にはまっていった。言い方は悪いけど。
《インタビュー第3回につづく》