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オリンピックへの道BACK NUMBER
女子卓球“黄金世代”加藤美優はなぜ24歳で突然、休養を選んだ?…世界卓球ベスト8の元《天才卓球少女》が「今まで卓球に追われすぎて」の真意
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by(L)Yuki Suenaga、(R)AFLO
posted2024/04/06 11:00
“史上最強世代”との呼び声高い日本の女子卓球界で戦ってきた加藤美優。パリ五輪を目前に控え、休養を選択した理由は何だったのか
そしてそこには、ある種の葛藤もあった。
「ライバルがいなかったら楽だったな、とは思いますね」
そう振り返りつつ、こう続ける。
「けっこう(ライバル選手に関する)質問をされるんですけど……何て答えたらいいんだろうといつも思いますね。何て答えてほしいんだろうって思っちゃう」
どんなに強い選手であろうと、他人は他人だ。それについて聞かれても、加藤は答えを持ち合わせていなかった。結果的に「自分にはどんな答えが求められているのかな」と深読みしてしまった。
「『下の世代の3人の選手が強いけどどう思う?』と言われても、『どう思うとは?』『何て答えるのが正解なんだろう』ってなってました。周りからそのことを聞かれるのは……きつかったです」
日本卓球「黄金世代」の間で…葛藤と現実
そして2020年1月、東京五輪の日本代表が発表された。
その時点での世界ランキングにおける日本選手の順位は、1位は伊藤美誠、2位に石川佳純、3位には平野美宇、4位に佐藤瞳。そして5位に加藤。6位が、早田ひなだった。1位の伊藤と2位の石川がシングルスの日本代表に、3位の平野が団体戦の代表に決まった。その結果を、加藤は冷静に受け止めた。
「もちろんオリンピックには出たかったんですけど、自分の実力不足なので」
そして付け加える。
「やっぱり3枠しかないので……難しいところではありますね」
新型コロナウイルス禍により、東京五輪は1年延期となり2021年に開催された。だが、オフがないほどハードな卓球にあって、それは1つの区切りに過ぎない。「次こそは」と、そこから再スタートを期して進む選手たちもいる。
一方で、加藤においてはそういうわけにはいかなかった。
それは長年、休みなく打ち込んできた卓球との向き合い方が変わらざるを得ない状況が起きたからだった。
<後編へつづく>