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「行くな、やめんのやめろ」「たむ、ありがとうな」中野たむとジュリア“最後の一騎打ち”の結末は…スターダムに残る者と去る者のドラマ 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2024/03/30 17:01

「行くな、やめんのやめろ」「たむ、ありがとうな」中野たむとジュリア“最後の一騎打ち”の結末は…スターダムに残る者と去る者のドラマ<Number Web> photograph by Essei Hara

3月20日、名古屋国際会議場で行われた中野たむとジュリア“最後の一騎打ち”。中野の額はジュリアの頭突きで大きく腫れ上がっていた

 お互いに九州で柔道をやっていた頃からの話だ。林下がプロレスラーになったから、舞華もプロレスラーになった。

「舞華、オマエってヤツは本当に進化の止まらない女だな。オマエが赤のチャンピオンで、チャンピオンの舞華と試合ができて今負けたのに、すげえ幸せだよ、約束通りどっちかがぶっ倒れるまでやり合おうって。ぶっ倒れたのは私だけど、本当にオマエがライバルでうれしいんだよ。ありがとうな」(林下)

「私は、オマエを追いかけてここに来たんだよ。やっと今、追い越したとこなんだから」(舞華)

「追い越してねえよ」と林下は否定した。

 初めて、タイトルマッチで林下に勝った舞華が言った。

「でも今日は私がチャンピオンなんだ。次の挑戦、待ってるから」

繰り返されてきた「プロレス団体、分裂の歴史」

 どんなに若くても、いくつであろうが、選択をしなければいけない時がある。その選択がよかったか、悪かったかは歴史が審判を下すこともあるが、それはあくまでも結果であって、思ったように自由に生きた方がいい。変な気遣いは自分を苦しめるだけだ。老婆心ながら言わせてもらえば、一度きりの自分の人生なのだから。

 それぞれの選択の先にあるものが何なのかは、歩み始めなければわからない。でも、いずれにせよ、時間には限りがある。

 プロレスの団体というものは不思議なものだと思う。ちょっと調子がいいと思うと、理由はいろいろあるが、分裂に向かう。

 古くは力道山の死後、日本プロレスからアントニオ猪木の新日本プロレスやジャイアント馬場の全日本プロレスが生まれて、日本プロレスは消滅した。新日本プロレスからは前田日明らのUWF。全日本プロレスからは天龍源一郎のSWSや、三沢光晴のノアも生まれた。

 分裂はエネルギーだという声もあるが、筆者は双方のメリットにはならないと感じる。そこには攻める者と守る者の違いもあるかもしれない。

 今後、女子プロレス界はどうなるのか? その行方は非常に興味深い。

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