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「私はスターダムの“超新星”」女子プロレスラー・天咲光由(21歳)に芽生えた責任感…退団直前の林下詩美が讃えた「2年間の成長」とは
posted2024/04/05 11:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
3月下旬のスターダムは、さながら“お別れシリーズ”だった。
22日、団体から林下詩美、ジュリア、桜井まい、MIRAI、弓月の退団が発表される。3月いっぱいでの契約満了。以前から噂されていたことが、いよいよ現実となったのだ(林下とジュリアは4.12後楽園大会にも参戦)。
発表がこのタイミングになったのは、20日まで行われていた「シンデレラトーナメント」が終わるのを待つためだ。選手の退団はインパクトが強い。それよりもトーナメントという“本筋”、先々につながる闘いに注目してもらうのが団体の狙いだった。
3月下旬のスケジュールは奈良、京都、仙台、山形の地方4大会。ここで退団選手を中心とした試合がいくつも組まれることになった。退団選手が持っているベルトをかけたタイトルマッチ。ジュリアは解散した自身のユニット「Donna Del Mondo」を1試合限定で復活させた。ユニット内での“惜別マッチ”も行われている。
姉妹のようだった林下詩美と天咲光由
その一つが、3.24京都大会での林下詩美vs.天咲光由だった。生え抜き選手たちのユニット「Queen's Quest」(QQ)同士のシングル戦だ。林下はユニットのリーダーだが、退団を決めた。対する天咲は“超新星”の異名を持つ新鋭。3月11日でデビュー2周年を迎えた。
2年前、プロレスラーとして初めてのリングで対戦したのが林下だった。試合後にQQに誘ってくれたのも林下だ。言ってみれば恩人。練習もよく見てもらい、姉のような存在でもあった。
林下も天咲を「本当の妹みたい」だと言っていた。練習中にできないことがあると「もう一回お願いします」と何度も繰り返す。芯の強さが先輩に好かれた。
トップ選手との5番勝負、写真集発売など注目される中での試合が続いたのが1年目。周りの目は自然と厳しくなる。新人らしく伸び伸びと、あるいはじっくりと経験を積むというわけにはいかなかった。とにかく必死で相手に食らいつく。その中に気の強さが見て取れた。一つ一つの技を丁寧に出している印象もあった。
注目度ではなく純粋に“いま現在の正味の実力”を見てもらえるようになったのは2年目からだろう。闘志を内に秘めるタイプだったが、徐々に表に出せるようになってきた。ここ数カ月は「声」も印象的だ。レフェリーのボディチェック時から「お願いします!」と大きな声が出る。試合中も、気合いがそのまま声の大きさにつながっていた。
声を出して気持ちと体を連動させるのは、他のスポーツでもよくあることだ。加えてプロレスは観客ありき。“試合にこめた気持ち”は、客席に届いてこそ意味がある。新人レスラーのセコンドは、頻繁に「声出せ」と「相手見ろ」というアドバイスを送る。