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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「大金を稼げるのに、なぜギャンブルを?」依存症克服へ…“借金4億7000万円”イタリア新鋭MFや名FWルーニーの“リアルな治療プロセス”
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images,Takuya Sugiyama
posted2024/03/28 17:27
ユーベのMFファジョーリやイングランドの名FWルーニーはキャリアの中で、ギャンブル依存症を克服するための生活を経験している
トナーリの処分が明けるのは来シーズン開幕後の9月で、3年前にアッズーリの一員として優勝したEUROも今夏の大会への参加は叶わず。仲間たちの奮戦を恨めしくTVの前で観ることしかできない。
ニューカッスルを率いるエディ・ハウ監督にとっても、今季チームの中心を担う一人となるはずだったトナーリを起用できない不満は大きいだろう。それでも46歳の指揮官は彼に同情を寄せ、復帰を待ちわびる。
「トナーリはチームでのトレーニングに励んでいる。ほとんどが個人メニューか少人数グループでの限定メニューだが、このつらい時期を乗り越えて復帰することは彼の精神面において重要な試練になるだろう」
ルーニーが口にした「ギャンブルはもうたくさんだ」
賭博スキャンダルはイタリアの専売特許ではない。プレミアリーグでも、昨年5月に賭博行為を禁ずる規約の違反者が出ている。
ブレントフォードのFWイヴァン・トニー(28歳)は、FA(イングランド協会)の調査で、17年から21年にかけ、計262回もサッカーの試合で賭けていたことを認め、8カ月間の出場停止処分と罰金5万ポンドの制裁を受けた。処分は今年1月に終了し、トニーは復帰後すでに4ゴールを決めている。
名FWだったウェイン・ルーニー(38歳)も、現役引退前のダービー・カウンティ時代に依存症の治療セラピーに出席し、自身のギャンブル依存について語ったことがある。
曰く「俺は若造でクラブでも代表でも移動ばかり、大金と暇を持て余していたから携帯を使ったオンライン賭博にハマった。自分が何をしでかしたかに気付くのは、とっくに負けが相当込んだ後さ。5カ月も経たないうちに80万ユーロを吸い取られたよ。こうなると、すった金のことばかり考えてサッカーに集中するどころじゃなくなる」
アルコールや格闘技好きで知られた放蕩三昧のルーニーですら「ギャンブルはもうたくさんだ」と反省しているのだ。
セリエA選手の約500人のうち、最低でも10~15人は
ファジョーリの治療にあたっているパオロ・ジャッレ医師は、アルコールや薬物、ニコチン等各種依存症の専門家だ。同医師は強調する。
「ギャンブルは悪癖や有害な習慣などではありません。れっきとした病気です。言い方は厳しいですが」
ドクターは冷静に驚愕の数字を並べる。