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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「大金を稼げるのに、なぜギャンブルを?」依存症克服へ…“借金4億7000万円”イタリア新鋭MFや名FWルーニーの“リアルな治療プロセス”
posted2024/03/28 17:27
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images,Takuya Sugiyama
ユベントスのMFニコロ・ファジョーリは今、“しくじり先生”をしている。
イタリア代表が米国遠征を戦っていた3月下旬、ファジョーリはトリノから北に車で1時間、ノヴァーラという町に赴き、自治体主催による依存症治療の啓蒙イベントに出席した。
昨年秋に発覚した違法オンライン賭博事件によって長期出場停止処分中のファジョーリは、FIGC(伊サッカー連盟)からギャンブル依存症の治療を義務付けられている。計10回のセラピー・イベント出席は専門家による治療プログラムの一環だ。
「今でも賭け事したい?」
「好きなサッカーで大金を稼げるのに、なぜわざわざギャンブルに手を出そうと思ったのかね?」
メインゲストとして出席するファジョーリには、同年代の依存症患者だけでなく年下のユベントス・ファンや厳しい目線の年配層から好奇と冷たい眼差しが注がれる。忖度なしの衆目に晒される中で、依存症にかかった自分に向き合い、しくじり体験を話すことが今の彼に課せられた試練だ。
闇サイトへの借金額は4億7000万円に膨れ上がり
昨年の晩夏、闇ギャンブルによる借金の重圧や胴元からの恫喝の恐怖に耐えきれなくなったファジョーリは、トリノ地検へ“自首”した。取調べに対し、観念したように実態や心情を白状した。
最初に違法サイトで賭けたのは21年の秋、U-21代表合宿中だった。代表のチームメイトだった(当時)ミランMFサンドロ・トナーリから誘われた。
レンタル修行先のクレモネーゼからユーベに戻った22年夏の時点で、闇サイトへの借金額は25万ユーロ(※当時のレートで約3300万円)だったが、1年と経たずに300万ユーロ(※4億7000万円強)に膨れ上がった。
クリアミスの号泣、真相は「借金のことを…」
23年4月16日、「練習にも試合にも身が入らない」状態で先発出場したサッスオーロ戦で、ユベントスは0-1の手痛い敗戦を喫した。自陣ゴール前でクリアミスを犯し、相手FWの決勝ゴールを“アシスト”してしまったファジョーリはベンチに下がった後、顔を覆い号泣した。