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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「大金を稼げるのに、なぜギャンブルを?」依存症克服へ…“借金4億7000万円”イタリア新鋭MFや名FWルーニーの“リアルな治療プロセス”
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images,Takuya Sugiyama
posted2024/03/28 17:27
ユーベのMFファジョーリやイングランドの名FWルーニーはキャリアの中で、ギャンブル依存症を克服するための生活を経験している
チームメイトが代わる代わる慰めるシーンは感動的だと話題になったが、涙の本当の理由は「借金のことを考えたら怖くてたまらなくなった」からだった。
違法オンライン賭博サイトには、一定のエリアごとに胴元の息がかかった“プロモーター”がおり、負け分のツケがたまったファジョーリは彼らから直接脅しを受けるようになっていた。
「負け分を払うか、さもなきゃ両脚へし折るぞ」
ファジョーリは3歳年上の同僚DFフェデリコ・ガッティに「欲しい腕時計があるんだけど母親から口座を止められてて」と嘘をつき、4万ユーロを借りて当座の返済にあてていた。その頃、ファジョーリは5つも6つも違法サイトを掛け持ちし完全にギャンブル依存症に成り果てていた。
心の聖域、ユーベだけは汚せなかった
「借金を返すためだけにサッカーの仕事をしているようだった」
プロモーターの一味からファウル数やイエローカードに関する八百長行為も持ちかけられた。だが、それだけはできないと踏みとどまった。
ファジョーリは愛するユベントスの試合には決して賭けなかった。心の聖域だけは汚せなかった。
出場停止期間が始まってから、彼は個人メニューの練習に日々勤しんでいる。治療プログラムにはFIGCのモニタリングの他にユーベのメディカルチームが加わり、手厚いサポート体制が整う。
「最も声をかけて励ましてくれるのは(FWドゥシャン・)ブラホビッチやガッティ、(FWフェデリコ・)キエーザです。フロントやアッレグリ監督、チームメイトたちの支えが本当にありがたいです」
アッズーリが連覇を狙うEUROに、トナーリは出られず
一方、海を越えたイングランドではトナーリが陰鬱な日々を送っている。
事件発覚後、すみやかに罪を認めて改心し、違法オンライン賭博捜査へ協力することで減刑を得たが、博徒崩れの心は晴れないままだ。
昨年12月中旬、UEFAチャンピオンズリーグでの対戦でミランがニューカッスル遠征に来た際、トナーリは併催される人気(ひとけ)のないUEFAユースリーグの試合をわざわざ訪れ、愛する古巣の仲間たちと旧交を温めた。母国やサッカーから離れた境遇がよほど堪えているのか、その姿はいじらしく映った。