そんな木村に対して、ブアカーオはごくまっとうなエールを送る。

「もし競技を続けるのであればクリーンな身体で自分のために練習して、お互いフェアな状態で試合をすることが重要です」

　タイでは以前から「ヤーバー」という覚醒剤が蔓延しており、社会問題にもなっている。ムエタイでも使用者がいるとされ、選手が穿くトランクスに「ヤーバー撲滅」と大きく記したキャンペーンを展開することも。ブアカーオにとって違法薬物は他人事ではないのだ。

木村ミノル戦後、インタビューに応じるブアカーオ　©Koji Fuse

ブアカーオが41歳にして迎えた“全盛期”

　今回のブアカーオの勝利は母国タイでも速報され、去る3月20日、14年ぶりに開幕した『K-1 WORLD MAX』の70kg級トーナメントの準々決勝に「ワイルドカードで出場して三度目の優勝を」という先行記事で盛り上がっているようだ。現時点でパッキャオ戦の実現とMAX出場の可能性は低いといわざるをえないが、70kg級の中心人物として再びブアカーオにスポットライトが当たっていることは確かだろう。

　RIZINにも参戦する“日本ムエタイ界の至宝”梅野源治は、自身のSNSでブアカーオの強さを「YAVAYだろ」と絶賛した。さらに20年前のK-1時代と比較して、加齢と筋肉量の増加によってスピードや反応速度は落ちていると分析しつつも、経験、テクニック、パワーといった要素を加味すると「過去と今､どちらが強いかと言えば今の方が強いと思う」と結論づけた。

　魔裟斗、小比類巻貴之、佐藤嘉洋、アルバート・クラウス、アンディ・サワーなど、かつて『K-1 WORLD MAX』でしのぎを削った同世代のライバルたちの中で、いまだ現役を続けている者は皆無だ。45歳9カ月でボクシングの世界ヘビー級王者に返り咲いたジョージ・フォアマンのように、ブアカーオも中高年の希望の星となるのか。