レジェンドが見せつけた圧巻の逆襲劇

　このまま木村の勢いに呑まれてしまうのか――誰もがそう思った刹那、ブアカーオの逆襲が始まった。1ラウンド終盤、木村をケージに詰め、フックの連打やテンカオ（カウンターのヒザ蹴り）で攻め込むと、相手の足が止まる。木村はフックを振り回してなんとか試合の流れを変えようとするが、ブアカーオはこれをブロック。逆転の糸口を与えない。

　第2ラウンド、木村を再びケージ際まで詰め、左のテンカオをボディに何度も突き刺す。金網際からなんとか逃れた木村だったが、ローや前蹴りで意識を下に向けられるとブアカーオの思うつぼ。ガードの隙間から右ストレートを顔面にねじ込まれ、深々とマットに倒れ込んだ。

ブアカーオの右ストレートがクリーンヒットし、金網を背に崩れ落ちる木村ミノル　©RIZIN FF Susumu Nagao

　ケージの上まで駆け上り、自らの勝利を誇示するブアカーオ。その姿はRIZINキック部門における“エース宣言”のようにも映った。

「自分がまだ健在であることを改めてアピールできたと思う」

　昨年5月のRIZINデビュー戦で実現した安保瑠輝也戦は、得意の左ミドルキックで試合のペースこそ握ったものの決定打を放つまでに至らずドローに終わった。その後の戦績は3戦1勝、2つのノーコンテストと決して本調子ではなかった。現在ブアカーオは41歳。10代後半から20代前半がピークとされるムエタイの世界では決して若くない。しかし今回、木村を完膚なきまでに叩きのめしたことで復活をアピールできたことは確かだろう。

健闘を称え合うブアカーオと木村ミノル　©RIZIN FF

　試合後、安保がケージの中に入り、再戦をアピールした。ブアカーオに異論はなかった。

「安保選手と再戦することになっても問題ありません。プロモーターにお任せします」

　この日の第2試合（70kg契約）で蛇鬼将矢から豪快なKO勝ちを収め、RIZINでのレコードを4戦4勝（4KO）とした憂也も「対ブアカーオ」に名乗りをあげたが、話の流れからすると安保との再戦が有力だろう。

試合後、安保瑠輝也がリングインしてブアカーオとの再戦をアピールした　©RIZIN FF

木村へのペナルティは適切だったのか

　一方の木村は「今はシンプルに悔しいですね。やり返したいと思います」と潔く敗北を認めた。

「（1ラウンドの猛攻も）絶妙に外されていたり、急所をずらされているなというのはありました」

　もっとも、今回の木村の復帰は時期尚早といわざるをえない。昨年11月、二度目の陽性反応が出てからまだ4カ月しか経っていないのだ。一度目で半年の出場停止処分が下されたならば、二度目はそれ以上のペナルティが科せられるべきではなかったのか。

【次ページ】　ブアカーオが41歳にして迎えた“全盛期”