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「負けたら引退します」朝倉未来vs平本蓮“驚きのビッグマッチ”はいかに発表されたか?「格やレベルよりも物語」というRIZINの戦略性
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/03/23 17:00
六本木ヒルズアリーナで行われた「超緊急会見」にて、対戦が決まった朝倉未来と平本蓮(中央にはRIZINの榊原信行CEO)
真面目な格闘技ファンはウンザリしているかもしれないが…
長い時間をかけて痛めつけてやると未来。対する平本は「BreakingDownルールに則って1分以内に倒します」。果たしてこの2人、試合後にノーサイドの握手ができるのだろうか。そう思ってしまうほどの会見だった。お互いどこかで認め合っているような気もするのだが……。
フェイスオフ=向かい合っての写真撮影時も、まったく目をそらさず睨み合う。コイツにだけは絶対に負けないという確信がお互いにあるのだ。
これだけ言い合って、負けたら“赤っ恥”だ。未来はYouTube、平本はSNSでファンを増やした、いわば“メディア型”ファイター(それだけではないが)であり、アンチもいるから負けた時のダメージはただごとではないはず。
そんなリスクのある試合から逃げない、むしろ望んで潰し合う姿勢にファンは感応しているのだ。そしてこれはRIZINの本領とも言えるマッチメイク。真面目な格闘技ファンは両者の罵り合いにウンザリしているかもしれないが、ある種“破廉恥”なマッチメイクで世間にアピールしてきたのがRIZINだ。
ボクシング世界5階級制覇のフロイド・メイウェザーJr.と那須川天心を闘わせる。メイウェザーを再来日させると、今度は朝倉未来戦。人気YouTuber・シバターの試合も組んだ。マニー・パッキャオとも契約し、メイウェザーとのリマッチをも狙っているという。
RIZINだからこそ実現したカード
UFCという世界最高峰の舞台が確立している中で“UFCがやらないこと”、“ここでしかできないやり方”で勝負してきたのがRIZINだ。だからこそ、未来も平本も伸び伸びと悪態がつける。
「みんなトラブルが見たいんです」
これは未来がBreakingDownについて語った言葉だが、RIZINでの未来vs.平本にも当てはまる。恥も外聞もない、けれど常人には到底不可能なケンカマッチ。見たいか見たくないかと言われたら、それはやはり見たいのである。