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「俺が選手を育てた…と言う指導者にロクな人はいない」センバツ注目・神村学園監督が語る“激変した”怒り方「やらせるより信じて待つ」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/03/22 06:01
神村学園の野球部を率いる小田大介監督、41歳
小田 うちの選手にはこういう言い方をしています。自分にとって楽なこと、楽しいことばかりをやるのは自主性ではなく、自分勝手なんだよ、と。自分がこうなりたいという目標に対して足りないことをがんばる、それが自主性ちゃうのか、って。
「やらせる」より「信じて待つ」
――すんなり理解してくれるものですか。
小田 ずっと伝え続けています。懇々と言います。それで、気づくまで待つ。確かに甲子園ばかりに気をとられると待っている時間はないんですけど、彼らの人生という尺度で考えたら、まだまだ先は長い。なので、高校を卒業して、社会人になってから「監督さんの言われていたことが、最近、よくわかります」と言ってくれる子もいる。その言葉を聞けたときに「俺、勝ったな」って思うんですよ。やっぱり、待ってよかったんだな、って。
――でも、そうならない場合も多いわけですよね。
小田 思い通りにならないのが人生だし、野球じゃないですか。昔、長嶋茂雄さんが「野球とは人生そのもの」と言っているのを聞いて、何のことを言ってるのかさっぱりわからなかったんです。でも、指導者になって野球を深く知れば知るほど、野球と人生って本当に一緒だなと思う瞬間が増えてきたんです。選手とのすれ違いや行き違いもありますけど、裏切るくらいなら裏切られる方がいいと思っているので。
――小田監督は2013年に監督に就任し、昨年の夏まで春夏あわせて5回、甲子園に出場しています。去年の夏はベスト4まで勝ち上がりましたが、それまでは甲子園で2勝以上したことがなかったんですよね。その壁を突破できたということは、その「信じて、待つ」指導が結実したということなのでしょうか。