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「西田有志の妻、と言われるのは嫌です(笑)」古賀紗理那が語る“文句ナシのMVP”に選ばれるまでの猛練習「紗理那は才能だけじゃない」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/03/11 17:00
NECレッドロケッツのリーグ連覇に貢献した古賀紗理那(27歳)。2年連続で自身3度目となるMVPに選ばれた
自身も現役選手としてVリーグで活躍した、NECの金子隆行監督は古賀の進化を証言する。
「求めるスパイクを打つために、必要なことを自分で考えて力にする。トスの速さだけを見れば、今は速い攻撃に見えないかもしれませんが、男子選手が当たり前に打つような高い打点で打てているので、相手からすればボールが到達するタイミングは同じで、ゆっくりしたトスからの攻撃でも高い打点から来るのでむしろ体感としては速い。男子選手が打つようなバックアタックを打てる、唯一の女子選手が古賀なんです」
高さを追求するために努力を惜しまない。さらに自分を活かすべく、周りも活かそうと働きかける。セッターの塚田だけでなく、周囲の選手に対しても例年以上に古賀はコミュニケーションを積極的に取ろうと努めてきた。その背景には、昨秋の五輪予選に向かう日本代表で残した“後悔”があると振り返る。
「もっと自分に矢印を向けなければならなかったのに、チームばかりに目を向けてしまってやるべきことをやりきれなかった。たとえばトス1本に対しても、これぐらいで大丈夫、とそのままにするのではなく、もっと徹底的に『こうしてほしい』と言うべきだったんじゃないか、と終わった後に思ったんです。だから、もう後悔するのは嫌だった。この1年、1シーズンを無駄にしたくない、っていう思いがすごく強くありました」
「年下ですけど…さすが、としか言えない」
そんな古賀の姿をみて、「明らかな変化と成長を感じた」と話すのは、2つ年上のミドルブロッカー、上野香織だ。
「紗理那のほうが年下ですけど、バレーボールに向き合う姿勢や練習への取り組み方、日常の過ごし方が、バレーボール選手として本当に一流だと何度も思わされたし、さすがだな、としか言えない。紗理那は才能があると言われるかもしれないけれど、私から見ればそれだけじゃない。自分でこうする、と決めたらどこまでも追求できる。努力の人で、努力の塊です」
金子監督や上野の他にも、古賀には誰より深く分かり合える存在がいた。一昨年入籍した夫で、男子日本代表のオポジット、西田有志(パナソニックパンサーズ)だ。
事あるごとに「西田の妻の古賀紗理那、と言われるのはいい加減うんざりするし、嫌です」と笑うが、大阪と神奈川と行き来する遠距離アスリート夫婦生活を嬉しそうに明かす。