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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
大谷翔平の結婚“じつは異例だった”囲み取材の決断…日本人選手のメディア対応、どう変化? 過去に米国で騒動「まとわりつくハエのよう」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJoe Camporeale-USA TODAY Sports/JIJI PRESS
posted2024/03/02 11:01
結婚を公表したドジャース・大谷翔平
普段は会計士をしているというニューヨーク在住日本人のその臨時スタッフは「警備会社の幹部をしている知人から、日本人のスタッフがいなくて困っていると言われ、私がやることになりました。メディアの受付対応をして、試合が始まるころに客席のコンコースを回り、主に松井さんが守っているレフト側を担当しました」と話していた。メディアだけでなく、その3連戦には1000人を超える日本人観戦ツアー客が訪れたという。
記者の葛藤「伝える」と「配慮」
日本人選手を取り巻くメディアサーカスのこれまでを当事者として振り返ると、自分の使命と周囲への配慮との間には、しばしば葛藤があった。日本人選手を囲んで直接話を聞ける機会がある場合はまだいい。しかし投手の場合は登板前日と登板日の試合後というように、週に多くて2回しか囲み取材をする機会がない。しかしその選手を担当し球場に取材に行っている以上は毎日、何かしら記事を出稿しなければならないという使命があった。困って投手コーチに話を聞きに行く場合も多く、あまりにも頻繁に話を聞きに行ったため嫌がられたこともあった。申し訳ないとは思いつつ、そうする以外にはなかった。
大谷「囲み取材で対応」の意味
あれから20年が経った。いまメジャーリーグには、大谷翔平という稀代のスーパースターがいる。日本人選手ではあってもスターともなれば、日本メディアだけでなく米国メディアからも注目される。日本人選手について周りのチームメートや対戦相手から話を聞きたいとき、米国人記者が先に聞くということがよくある。大谷がまさしくそんな選手である。
その点、大谷が結婚を報告した自身のインスタグラムには、「明日の囲み取材で対応をさせていただきますので……」とも書かれていた。結婚について質問を受けるという、異例の意思表示である。日本だけでなく米国でも大きなニュースになるというスターとしての自覚と、野球に集中したいという強い意思がうかがえた。
日本だけにとどまらない大規模なメディアサーカスは、これからも続いていくだろう。情報を伝えつつも、公表理由に「皆さんうるさいので(笑)」と冗談めかしながら釘を刺す――大谷の結婚報告は、自身の経験から大谷が導き出した最善のやり方だった。