- #1
- #2
熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
《消えた天才》結婚生活が9カ月で破綻のち「地獄に落ちたPK失敗」世界最強FWになるはずが今は無所属…アレシャンドレ・パト34歳の悲運
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/03/01 11:00
ACミラン時代のアレシャンドレ・パト。若くして煌めいた才能によって、2010年代を代表するストライカーとしての期待値が高まったが……
「デビューと初ゴール、世界クラブW杯での得点と優勝と、非常に短い間に多くのことが起きた。毎日、夢の中を生きているようだった」
パトの勢いは止まらない。07年前半、クラブで27試合に出場して12得点。これほどの逸材を、欧州クラブが放っておくはずがなかった。複数のメガクラブが争奪戦を繰り広げた末に8月、18歳になる直前に移籍金2400万ユーロ(約39億円)で当時の欧州クラブ王者ACミランへ移籍した。
ミランでも順調な船出、若手女優とも結婚
選手登録の関係でデビューが少し延びたが、08年1月13日のナポリ戦で先発。前年の世界最優秀選手に選ばれたばかりのカカ、点取り屋ロナウド、オランダ代表MFセードルフら名手に交じって堂々とプレーした。後半29分、左後方からのロングパスを巧みにトラップしてGKと1対1になったところをゴールに流し込んで初得点を記録した。
「子供の頃から憧れていたロナウド、カカらと一緒にプレーし、しかもゴールを決めることができて本当に嬉しかった。これならイタリアでもやっていける、と確信した」
この年、セレソンにも招集されると、3月のスウェーデンとの強化試合で後半途中から初出場。敵陣深い位置でGKのキックをブロックし、目の前へこぼれたボールをすかさずロングシュート。これがゴールに飛び込み、決勝点となった。
インテルナシオナルで、世界クラブW杯で、ACミランで、そしてセレソンでと、すべてのデビュー戦でゴールを叩き込む勝負強さに、誰もが驚嘆した。
私生活では、09年7月にブラジルの若手女優と結婚。やることなすことすべてが理想的で、ブラジルの全フットボール少年の憧れの的となった。
相次ぐケガ、9カ月で結婚生活破綻、そして…
ACミランでは、08-09シーズンに42試合に出場して18得点5アシストと絶好調だった。しかし、10-11シーズン以降、次第に故障が増える。足首、内転筋、アキレス腱、太ももの肉離れなど筋肉系の負傷……。11-12シーズンだけでも6度故障し、治療とリハビリに実に166日間を費やした。
「相次ぐ故障で、自分の身体が信じられなくなった。故障が癒えて練習に復帰しても、『またすぐに故障するんじゃないか』と不安になる。そして、実際にまた故障してしまうんだ」
私生活でも、波風が立ち始めた。