- #1
- #2
マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球《二軍キャンプ》で見つけた“無名の逸材候補”たち…鷹「勝負の4年目スラッガー」、燕「先輩打者を圧倒のルーキー」、鯉「二軍の4番打者」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2024/02/27 06:01
プロ2年目を迎えた広島の内田湘大。1年目は本塁打0、打率も1割台と苦戦も“未来の大砲”にかかる期待は大きい
切り替えて、守ってたんだ。去年は、これが出来なかった。ぶざまな結果に終わった打席の後に、守りながらスイングをなぞってみたりして、打ち損じを引きずっていたから、守備ワークにも破綻が目立った。
第2打席に注目した。速球を狙いすましたような見事なフルスイングから、ライナー性の打球があっという間に左中間フェンスを直撃した。
シャキーンと聞こえるような乾いたインパクト音だった。この前まで、一軍キャンプの球場で聞こえていたインパクト音だ。怪力の衝撃がバットの真っ芯からボールに伝わって、生きもののようなスピードでボールが飛び去っていった。
第2打席の興奮がまだ残っているような引っかけた打ち方の三塁ゴロに終わった第3打席。ならば、次はどう修正してくるんだ……と見ていた4打席目。
変化球2つで追い込まれた次の外角高めの速球を、おっつけたスイングのハーフライナーでライト線に持っていってみせた。
成長を続ける「無名の逸材候補」たち
変わっている。間違いなく、上手くなっている。チーム内で若手No.1と評されているパワーに、臨機応変の実戦力が少しずつ備わってきている。
実は、試合途中から、ちょっと失礼な「比較」をしながら、試合を見ていた。今日の日本新薬の4番とカープの4番打者、どちらが上だろうか。
社会人の一流チームの4番打者を引き合いに出しては申しわけないと思いつつ、そういう目で見ていたが、私には「内田湘大」のほうが最大値も大きく、魅力的に見えた。
今季20歳の選手が社会人の強豪で4番を打っていたら、間違いなく、12球団グリグリマークのドラフト上位候補生である。
打つときは打つ、守るときは守る……それぞれの集中力が高まって、試合展開に応じたプレーをしながら、持ち味を発揮する。プロなら当たり前みたいな事だろうが、それがぼちぼち出来始めたような春のキャンプ。
無名の逸材候補・内田湘大のプロ野球生活も、2年目の春のここから、ようやくスタートしたのかもしれない。