対立王者たちの中では、モロニーはどんな相手との対戦も恐れない勇敢な選手です。リングマガジンのバンタム級ランキングではモロニーが1位にランクされており、サンティアゴ戦の勝利で一気に3位以内に浮上確実な中谷との激突が実現すれば、リングマガジン王座がかかった戦いにもなるはずです。そういった要素もあって、統一戦の中ではまずはモロニー対中谷戦の挙行を望みたいですね。

　アンカハス戦での井上拓真はこれまでで最高の出来でした。私は実はこの試合はアンカハスの判定勝ちを予想しており、拓真が元世界王者を相手にこれほどのボクシングをやってのけるとは思いませんでした。アウトサイドからのカウンターでダメージを与え、最後は接近戦でのボディ打ちで沈めるというオールラウンドパフォーマンス。拓真がこの会心の勝利の余勢を駆って、中谷との統一戦に駒を進めれば、多くのファンの興味を惹きつけるイベントになるでしょう。

「井上尚弥の弟」という重圧と戦ってきた井上拓真（中央）。強敵を撃破して初防衛に成功した　©︎Hiroaki Yamaguchi

　ただ……これはあくまで私個人の意見ですが、現状では拓真が中谷に勝つシナリオは想像できません。素晴らしい成長を誇示した拓真に失礼な意見だとはどうか思わないで下さい。私の中谷に対する評価が極めて高く、唯一、拓真の兄を除いて、誰であっても中谷相手に優位だとは思わないというだけなのです。

井上尚弥と“ドリームファイト”「貯金を始めておく」

　最後に井上尚弥対中谷戦の可能性にも触れておかなければいけませんね。

　特に中谷がバンタム級で4冠統一を成し遂げたあと、昇級して井上尚弥と対戦するようなことがあれば、日本ボクシング史上最大のドリームファイトになります。井上尚弥の骨格を考えれば、フェザー級は最適と言い切れない階級になることもあり得るだけに、中谷戦はスーパーバンタム級で考慮されてほしいです。

井上尚弥との対戦が実現すれば、世界も注目する一戦になるだろう　©︎Takuya Sugiyama

　井上尚弥対中谷戦は世界的にも莫大な注目を集めることは間違いありません。この一戦を予想するのはまだ早すぎますが、少なくとも今の私には井上の敗戦を予想することはできません。ただ、井上が試練にさらされることがあるなら、それは中谷との対戦ではないかとだけは言っておきたいです。スーパーファイトが日本で実現し、来日取材をするときのために、私も今から貯金を始めておこうと思っています（笑）。