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「名もない雑草にも陽は当たる」評価急上昇の広島ドラ3左腕・滝田一希が追求する速く強い真っ直ぐ《母を亡くし一時はプロ断念も…》 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2024/02/12 11:01

「名もない雑草にも陽は当たる」評価急上昇の広島ドラ3左腕・滝田一希が追求する速く強い真っ直ぐ《母を亡くし一時はプロ断念も…》<Number Web> photograph by KYODO

ブルペンで力強い球を投げ込む滝田。星槎道都大時代にはソフトバンク3軍から6回で10三振を奪い注目された

 プロ入り後、初めて打者を相手にした登板でも、強さを見せた。8日にフリー打撃に登板し、打者計5人に25球。事前に投げる球種を告げた中で8個のファウル、4つの空振りを奪い、打撃ケージから出た打球はわずか1球しかなかった。球の強さを示し、新井貴浩監督からも一定の評価を得た。

「いいね。キレがある。真っすぐにキレがあるし、チェンジアップもいい抜け方している。ナイスピッチングだったと思います」

 約半数の12球がボールとなり、特に変化球の抜け球が目立った。序盤に大きく抜けていたチェンジアップを終盤にはストライクゾーン付近に投げ込む一定の修正力は示したものの、変化球の精度向上と安定が課題。真っすぐ一本ではプロの世界で生きていけない。滝田自身、それは分かっている。

「球速を求めたら、ああいうフォームになった。変化球のことはまったく考えてなかった」

 根っからの明るさが眼前の壁を壁と感じさせない。その一方で、やらなければいけないことも分かっている。

「まだ変化球がピッチトンネルに通っていないので、今のままなら見られてしまう。全部の球種を通せるようにしていかないといけない。1回腕の振りが同じでも、9回腕の振りが違えば打たれる。どう継続して、体に染みこませるか。意識してやらないといけない」

名もない雑草の挑戦

 北海道の札幌と函館の間にある田舎町に、6人きょうだいの5番目に生まれた。幼少期から自他ともに認める“やんちゃ坊主”は兄の影響で野球をはじめ、星槎道都大で頭角を現した。だが、大学3年の5月に、女手一つで育ててくれた母・美智子さんを亡くした。悲しみの淵で野球を辞めることも考えたが、家族の支えや周囲の後押しもありプロを目指し、今がある。

「名もない雑草にも陽は当たる」

 滝田が好きな言葉だという。地元北海道にまだ雪景色が広がる15日からは、キャンプ地を宮崎から沖縄に場所を移し、競争は激化する。3月には地元北海道でオープン戦が行われ、北海道の雪も溶ける5月ごろには、プロ入りを機に購入した母の墓が建つ。墓前に報告するまで、アマチュア時代は無名の左腕が春の争いを戦い抜く。

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