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《成功確率2/6》ルイス・ハミルトンの2025年フェラーリ移籍は吉か凶か? 歴代王者と跳ね馬の甘くも苦い関係性を振り返る
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2024/02/09 11:01
異例の移籍表明をしたハミルトン。メルセデスでは2020年を最後にタイトルを獲得できていない
F1が誕生した1950年からF1に参戦し続けている唯一のチームであるフェラーリは、だれもが「引退するまでに一度はドライブしてみたい」と憧れる名門チーム。過去にも多くのチャンピオンがフェラーリの本拠地イタリア・マラネロの門を叩いた。
その中で、最も成功したドライバーが、ミハエル・シューマッハだった。ベネトン時代の1994年から2年連続でチャンピオンを獲得したシューマッハが、フェラーリに移籍したのは1996年。名門再建を託されたシューマッハは早くも1997年にはタイトル争いを展開し、2000年に見事ドライバーズチャンピオンを獲得。フェラーリにとっては21年ぶりのドライバーズタイトルだった。その後、シューマッハは2004年まで5連覇を達成し、フェラーリとともに一時代を築いた。
フェラーリで勝てなかったチャンピオンたち
その一方で、フェラーリという伝統の中で、もがき苦しんだチャンピオンたちもいる。その中のひとりがフェルナンド・アロンソだ。シューマッハ同様、ルノーで2度王座に輝いた後、フェラーリに移籍したのは2010年。開幕戦でいきなり優勝する幸先の良いスタートを切ってチャンピオンシップをリードしていたものの、最終戦で逆転でタイトルを逃してしまう。2012年にもチャンスは巡ってきたが、この年も最終戦までもつれたタイトル争いを制することができなかった。その後、フェラーリとの間に徐々に隙間風が吹き、アロンソは2014年限りでマラネロを去った。
そのアロンソと入れ替わるようにしてフェラーリに移籍してきたのがベッテルだった。ベッテルにとってフェラーリは単なる名門チームではなく、小さい頃のヒーローだったシューマッハが在籍していたあこがれの集団だった。シューマッハ同様、名門復活を託されたベッテルは2017年と2018年にタイトル争いを演じたものの、タイトル獲得はならなかった。その後、フェラーリはチーム内で権力闘争が勃発。チーム代表が更迭されると、その2年後にベッテルもまたチームを追われてしまう。
チャンピオンになってからフェラーリに移籍してきたドライバーは過去に6人いるが、そのうち4人はフェラーリでチャンピオンになることなく、マラネロを去っている。フェラーリでチャンピオンになるという夢をつかむことができたのは、わずか2人。ひとりはシューマッハで、もうひとりは1950年代に5度王座を獲得した伝説のドライバーであるファン-マヌエル・ファンジオだ。
果たしてハミルトンのメルセデス・ラストイヤーはどうなるのか。フェラーリに移籍して再び輝きを取り戻すことができるのか。2024年シーズンが開幕する前からすでに、2025年を見据えた戦いが始まろうとしている。