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《成功確率2/6》ルイス・ハミルトンの2025年フェラーリ移籍は吉か凶か? 歴代王者と跳ね馬の甘くも苦い関係性を振り返る
posted2024/02/09 11:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2月1日、F1界に衝撃が走った。
ルイス・ハミルトンが2024年限りでメルセデスを離脱し、2025年からフェラーリへ移籍することが正式に発表された。
このニュースに世界中が驚いた理由は、ハミルトンが昨年の8月末にメルセデスとの契約を2025年末まで延長すると発表していたからだ。ハミルトンにとってメルセデスは特別な存在だった。カート時代からメルセデスのサポートを受け、その関係はマクラーレンでF1にデビューした後も変わらなかった。25年以上もの長きにわたる関係から、F1界では「引退後もハミルトンはアンバサダー的な存在としてメルセデスに留まるだろう」と言われていたほどだった。
しかし、ハミルトンはそのメルセデスとの関係を断った。しかも、契約がある2025年末を待たず、解除条項を行使して24年限りでメルセデスを去る決断を下した。
なぜ、ハミルトンは翻意したのか。
ドライバーにとっての永遠の憧れ
似たような状況は10年前にもあった。2014年限りでセバスチャン・ベッテルがレッドブルを離脱し、フェラーリ入りしたときだ。当時、ベッテルは2010年から4連覇していたトップドライバーだった。しかし、2014年にレギュレーションが大きく変更されると、所属していたレッドブルは大不振。その年、1勝もできずにシーズンを終えた。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、当時を次のように述懐する。
「当時、セブ(ベッテルの愛称)はすでに成功を収め、27歳になっていた。フェラーリに乗らずにキャリアを終えたくない。2015年が移籍するチャンスだと思ったんだろう。フェラーリの魅力は誰にとってもとてつもなく大きなものだからね」
その2014年に、チャンピオンとなったのがハミルトンだった。その後、2020年までの7年間で6度王座に就き、一時代を築いた。だが21年にタイトルを逃すと、2022年から導入された新しいレギュレーションにメルセデスがうまく対応できず、この2年間は勝利から遠ざかっていた。
フェラーリ入りが発表された後、ハミルトンは自身のSNSでその思いを次のように述べた。
「小さい頃に抱いていたいくつかの夢をメルセデスとともに達成した。そして今、僕にはもうひとつの夢を実現する機会が訪れた。それは、真っ赤な跳ね馬に乗るという、子どもの頃からの夢だ」