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「スターダムをクビになって…」人気女子プロレスラーが初告白 ウナギ・サヤカ“超満員の自主興行”に密着して感じた「不思議な風格」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/02/09 17:00
後楽園ホールでの自主興行『殿はご乱心~1番金星~』を成功させ、新たなベルトも奪取したウナギ・サヤカ
初めて語った「スターダムをクビになって…」
インタビュースペースでのウナギは「スターダムをクビになって……」としゃべり始めた。これまではそういう表現はしてこなかったはずだ。自主興行を成功させて吹っ切れたのか、あるいは単に頭が回っていないのか。ともあれウナギの言葉は率直で切実だった。
「スターダムをクビになって、ギャン期として苦しかったプロレスを楽しいプロレスに変えたいと思ってやってきました。たくさんの人に“スターになれ”と言われてきましたけど、私はプロレスラーもお客さんも誰ひとり蹴落とさない、みんなを救うスーパーヒーローになります。プロレスは誰かを蹴落として上がるものじゃない。私がすべての人を幸せにします」
この1年あまり、1人で突っ走ってきた。男女問わずさまざまな団体に乗り込んで、その度に感じたのは「導かれている」、「支えられている」ということだった。相手がいなければ試合はできない。試合を見てくれるファンがいなければプロレスは成り立たない。今回の自主興行だって、自分1人ではできないことだった。だから誰も蹴落としたくない。
「基本的には“自分が自分が”なんですけど(笑)。みんなもそうなって一緒に進んでいければいいなって」
見据えるのは東京ドーム大会だ。観客の前でも宣言した。大会後、あらためて真意を聞く。
「ドームで自主興行やったら誰も文句言えないでしょ。ドームに連れて行きたい人たちがいるんです」
東京ドーム大会で「大きい夢を見たい」
東京ドーム大会といえば新日本プロレス。けれどプロレスは新日本だけではない。沢山の観客に見てほしい選手がいる。彼ら彼女らと、東京ドームのリングに立ちたいとウナギは考えている。
「力はあるけどドームに縁がなかった人たちもいるわけじゃないですか。自分が(ドーム興行を)やりたいっていうのが一番だけど、私の周りには“見たら絶対面白い”人たちがいる。それは後楽園での試合を見た人なら分かると思う。その選手たち、私の大事な存在と大きい夢を見たいなと。ギャン期の1年ちょっと、本当に大きな力に支えられてきたなと思うんですよ。もらったものを返せるウナギ・サヤカにならないと。それまではやめられないですね」
まだ具体的にどうこうという話ではない。しかし間違いなく言えるのは、所属団体を「クビになった」一レスラーが後楽園を満員にし、ドーム興行すら視野に入れているということだ。
自分が絶対的主役の興行を成功させて、なのにインタビュースペースで「誰も蹴落とさない」と宣言する。メチャクチャに暴れてきて、気がつけば他の選手にない不思議な“風格”を身にまとうようになっていた。これまで「お前に何ができる」と何度も言われてきて、今ならこう答えることができる。
「後楽園ホールを埋めて3冠王になりましたけど」
ギャン期は続く。2024年も、ウナギ・サヤカは業界最注目の存在だ。