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イチローの「2025年いきなりMLB殿堂入り」確実、ただ満票可能性は…ヤンキースの伝説リベラ&ジーターの明暗に見る“難易度と運” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/02/06 11:00

イチローの「2025年いきなりMLB殿堂入り」確実、ただ満票可能性は…ヤンキースの伝説リベラ&ジーターの明暗に見る“難易度と運”<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

シアトル・マリナーズ時代のイチロー。2025年のMLB殿堂入りに期待が集まる

 ジーターはリベラと同じ1995年にデビューし、リベラと同様ヤンキースひと筋でプレーして、史上6位の3465安打。資格を得た初年度、投票権を持つ397人の内396票を獲得したものの、わずか1票を失って得票率99.7%になった。

 リベラとジーター、ポジションが違うから単純な比較はできない。ただ、オールスター選出はリベラ13回に対してジーター14回など、ジーターがリベラ以上の人気を誇ったにもかかわらず、満票での選出とはならなかったのだ。

満票殿堂入りへ、不利に働きそうな“ある数値”とは

 それを踏まえるとイチローが来年、一発で殿堂入りするのは間違いない。ただし満票はかなり難しいのではと推測される。

 まず、イチローはMLB一の人気球団のヤンキースではなく、マリナーズでキャリアの大半を過ごした。ヤンキースにも在籍したが3シーズンだった。

 また日米通算でMLB最多のピート・ローズの4256安打を抜く4367安打を打っているが、日米については参考記録扱いとなっている。2004年にジョージ・シスラーのシーズン257安打を抜く262安打の大記録を樹立しているものの、シーズン記録と通算記録では、重みが違う。

 記録面で言えば、イチローに不利に働きそうなのが――投打守備の総合指標であるWARの数値である。

 この数値はセイバーメトリクスが普及した2010年以降に急速に重視されるようになった。打者だと長打力があり、出塁率が高い選手が有利だ。また積み上げ型の数字なので、長くプレーした選手がより数字が高くなる。

『Baseball Reference』によるとイチローのWARは、60.0でMLB史上193位。例えば今年一発で殿堂入りしたマウアーは55.2で250位、2022年一発殿堂入りのデビッド・オルティーズは55.3で248位であり、不足しているわけではない。

 また満票選出のマリアノ・リベラのWARも56.3で229位と、それほど高くなかった。ただしリベラは「救援投手、クローザー」という特殊なポジションなのに対して、イチローは外野手という競争の多いポジションである。

 同じ外野手の一発当選でいえば2016年のケン・グリフィーJr.のWARは83.8(58位)、2009年のリッキー・ヘンダーソンは111.2(19)だった。彼らの数字に比べれば、やや迫力不足という印象があるのは否めない。

イチローがMLBに新たな野球をもたらしたワケ

 ただしイチローは、マリアノ・リベラが「クローザーの歴史に一時代を画した」のと同様、MLBに新たな野球をもたらした存在である。

【次ページ】 日本野球の流れをくむイチローは歴史的存在だ

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