Number ExBACK NUMBER
「出産より現役時代のアキレス腱痛の方が…」1児の母になった元短距離日本代表・和田麻希(37歳)が明かす“コーチだった夫”との15年交際秘話
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byL)本人のインスタグラムより、R)Shigeki Yamamoto
posted2024/01/18 11:05
2021年に競技を引退した和田さん。夫の明憲さんは龍谷大時代の先輩にあたり、交際は15年にもなったという
「ちゃんとしたコーチというよりかは、大学時代の延長線で見てもらうという感じでした。普段は母校の渡邉(為彦)先生に見ていただいて、休日にひとりで西京極の競技場で練習するときは、彼に付き添ってもらって。大学時代から私の動きを知っているので、良し悪しや変化も分かるし、私が『こうしたい』という動きも理解してくれるので、そういうサポートは有り難かったですね」
普段は会社員として働いている明憲さんは、仕事終わりや休日を使い、“練習パートナー”として、和田の自主練や試合に駆けつけていた。だが、彼女にとっては技術的なアドバイスより、メンタル面でのサポートのほうが大きかったという。
「私は頑固な性格なので、技術面をズバッと指摘されても、言い返しちゃうんですよね(笑)。それよりも、試合前って緊張もするし、気持ちも不安定になるので、そんなときに近くにいてくれることが安心だったんです。口でどうこう言うというよりかは、とりあえずその場にいてくれて。彼の存在が安心材料になっていた面もありました」
和田がその存在を強く実感したシーズンがある。2017年の日本選手権。100mと200m両種目で予選落ちに沈んだのだ。敗退した直後、頭によぎったのは「引退」の二文字だった。
引退を悩むも…「彼から『もうちょっとやってみたら?』と」
「その時点で30歳を過ぎていたので、引退する時期の一つの目安でもあったし、結婚や出産というのも考えていて……。競技で結果が出せないのなら、会社にも迷惑をかけるし、それならここで新しい道に進むべきなのかなと思い始めたんです」
日本の女子短距離では20代がピークと言われるなか、和田はすでにベテランの域に差し掛かり、記録も停滞していた。慢性的なアキレス腱痛にも悩み、心身ともに削られていた。
日本選手権後、明憲さんにもその気持ちを伝えた。そのとき返ってきた一言が、彼女の現役引退を思いとどまらせたという。
「自分の中ではまだモヤモヤしている部分もあって、そんなときに彼から『もうちょっとやってみたら?』と言われたんです。長年の付き合いなので、『本当はやめたくないんだろうな』って察したんでしょうね。普段は絶対に私の言ったことを否定しない彼に、そう言われたのがうれしかったんですよね。その言葉に助けられました」