濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「美談として語るわけにはいかない」アーチュレッタ“まさかの減量失敗”で残る疑問の数々…それでも“圧巻KO”の朝倉海が見せた笑顔の理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/01/01 17:03
RIZIN.45「朝倉海vsフアン・アーチュレッタ」の一戦は、アーチュレッタの体重超過により異例の試合となった
「朝倉海がRIZINでやるべきことはもうないのかも…」
海は大前提にケチのついた、どうやってもベストにはならない試合を、考えうる限りベターなものにした。与えられた状況の中での最良と言うべきか。だからこそ、海はアーチュレッタがレスリングで勝負してきても問題なかったと自信を持って語る。それだけの対策はできていたと。彼がそう言ってくれることが、何よりの救いになった。
2023年、朝倉兄弟は新たなチーム「JAPAN TOP TEAM」を結成。国内の有力選手が集まり、海外から指導者やスパーリング・パートナーを招聘してもいる。
「今回はプレッシャーもありましたけど、それも含めてすべてが力になりました。兄貴のこともそうだし、パートナーやコーチが世界中から集まって、僕のために人生をかけてくれているので。今、もの凄くいいチームになってるんです。優秀な選手とコーチがいる。今なら世界トップを取れると思ってます」
今後の展望を聞かれた海は、こう答えている。
「海外で闘うか(RIZINで)防衛戦をしていくか。榊原さんと相談したいですね。海外ならUFCに行きたい」
言うまでもなく、UFCはMMAにおける世界最高峰の舞台だ。そこで自分の実力を試し、証明したいという思いを海が抱くのも当然だろう。
「確かに、朝倉海がRIZINでやるべきことはもうないのかもしれない」
プレスルームで隣り合わせた編集者がつぶやいた。RIZINで防衛戦をする場合、佐藤将光や太田忍といった魅力的な挑戦者候補はいるものの、海は対戦の機運が高まるのを待つしかないという立場だ。一方でUFCは独占契約だから、UFC参戦イコールRIZIN離脱ということになる。
RIZINが抱えるいくつものテーマ
「UFCに行きたいという気持ちを止めるつもりはありません」
榊原は言う。RIZINが窓口になって選手をUFCに送り出したこともあると。とはいえRIZINの“宝”を失いたくもない。海外の提携団体参戦、あるいは海との対戦を求める強豪選手の招聘にも力を入れたいとコメントした。曰く「視野を広くもって話し合いたい」。UFCに行かずとも海が燃えられるマッチメイクができるかどうか、プロモーターの手腕が問われるというわけだ。
2024年のRIZINには、いくつものテーマがある。朝倉未来の復活、この日の最終試合で圧巻の一本勝ちを見せた堀口恭司に勝てる選手はいるのか。マニー・パッキャオvs.フロイド・メイウェザーJr.のリマッチという仰天するしかないプランも。
そんな中で「朝倉海の試合を日本で見られるかどうか」も大事なポイントになってきそうだ。UFCで闘うことにも、RIZINをUFCに負けないステージに高めることにもロマンがある。彼はどちらを選択するのだろうか。