大晦日RIZINで“MMAデビュー”3選手の明暗はなぜ分かれた？ 皇治が劇的勝利し、安保と芦澤が“完敗”した理由「ナメたらダメっす」

　プロレス・格闘技の世界では、倒れた相手への蹴りを「サッカーボールキック」と呼ぶ。サッカーのシュートばりに相手を蹴り飛ばすのだ。

　大晦日の『RIZIN.45』さいたまスーパーアリーナ大会でこの技を決めたのはMMAデビュー戦の皇治。キックボクシングで武尊や那須川天心と対戦してきた人気選手だ。対戦相手は三浦孝太。“キング・カズ”三浦知良の次男である。

　サッカー界のレジェンド、その息子にサッカーボールキックで勝つ。話題性込みで100点満点のデビューだ。インタビュースペースでの皇治はこれ以上ないくらいゴキゲン。「ここはまず大きな拍手でしょ」と取材陣に呼びかけた。

入場する皇治。隣にはセコンドを務める青木真也　©RIZIN FF Susumu Nagao

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　三浦は21歳。アマチュアや小さな大会から実績を積み上げてきたわけではなくRIZINでデビューした。いわゆる“親の七光り”で、本人もそれをよく理解している。これまでの公開練習や試合後インタビューでの言葉の端々から、実直な人間性が伝わってきてもいた。

　三浦にとってはMMA4戦目となる皇治戦。キックボクサーとして成功した皇治に対し、三浦は序盤、打撃で対抗していく。これまでの闘いを見ると組んでからの展開が持ち味に思えたのだが。試合後に本人が理由を明かした。

「この1年間、打撃を強化してきたんです。もともと打撃は得意ですし。それを見せることができていなかったので、今回は打撃を見せてから組みたかった。毎回、最初から組んでいては成長が見せられないので」

三浦孝太「拳が折れて…パニックになってしまいました」

　三浦は真摯にMMAに取り組んできた。その成果を試合で試し、見せるために打撃から入った。だがそこは皇治のフィールドだ。常に自陣ペナルティエリアでプレーするようなもの。

皇治相手に積極的に打撃を繰り出した三浦孝太　©RIZIN FF Susumu Nagao

　いいパンチが当たる場面もあったのだが、三浦は拳を傷めてしまう。インタビュースペースでの三浦は右拳を包帯で固めていた。

「打撃でやり合っている間に拳が折れて。そこからパニックになってしまいました。1ラウンドが終わってコーナーに戻った時もセコンドに言えなかったです」

　ラウンド間のインターバルでは、自分の状況をセコンドに伝えるのも選手の役目だ。ケガがあれば作戦も変わる。若い三浦にはそれができなかった。

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