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「ひたすら悔しくて…」フィギュア全日本選手権銀メダルの鍵山優真20歳が明かした“世界一”への欲望「今のままだと世界のトップに立てない」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/30 17:03
フィギュア日本選手権で2位となった鍵山優真。世界選手権への切符を手にするも「今のままだと世界のトップには立てない」と語った
「ジャンプもスピンもすべて、出来栄え(GOE)とレベルを取ろうと全力でやっていました。でも、気づいたらステップに入る時には体力がなくなっていて……。気合が入り過ぎちゃいましたね」
演技終盤のステップシークエンスは、コストナーコーチと最も注力して取り組んできた、一番の見せ場。曲調がだんだん速くなっていく部分で、畳み掛けるように力強くキレ味の良いステップを見せるシーンだ。
「ここから、この激しいステップをやるのか、と。もうほとんど足に力が入らなくなっていました」
重く棒のように感じる足で滑り始めたものの、トウをひっかけてつまずいてしまう。
『うわっ。やってしまったーー』
思わずガッツポーズ
そう思いながらも、「少しでも失敗したら遅れてしまう曲なので、すぐに切り替えて、冷静に対処しました」。
演技を終えると、思わずガッツポーズが出た。
「GPシリーズから通じて、なかなかノーミスの演技は出来ていなかったので、全日本の独特な緊張感に勝てた!という思いで、ガッツポーズしました」
フリーは198.16点で首位、総合292.10点で銀メダル。しかしキス&クライでは、ほとんど笑顔を見せなかった。フリーの会心の演技以上に、ショートでのミスを悔やむ。それは、目指すものの高さを物語っていた。
表彰式の直後、銀メダルを胸にインタビューに応じる。
「まだ整理ができていないので簡単なことしか言えませんが、嬉しいけど悔しくて、悔しいけど嬉しい、という気持ちです」
手が届きそうで、届かなかった、“日本一”のタイトル。その気持を素直に口にする。
「僕が予想していた以上にハイレベルですごい試合になりました。去年の悔しさもある中で、思い切り演技できたことは良かったと思います。本当に、日本一を獲るのが一番難しいな、と。皆もそう思ってるはずです。それくらいレベルが高い日本男子のなかで、皆で切磋琢磨して、競技を盛り上げて行けるのは、自分にとっても楽しいことです。来年はもっとパーフェクトな演技をめざして金メダルを獲るだけです」
来季こそ、日本一。鍵山にしては珍しい強気発言だった。
「今のままだと世界のトップに立てない」
翌日夜、世界選手権の代表発表は、三浦佳生、佐藤駿と3人で焼肉を食べながら、ニュースを待った。誰が選ばれても、誰が選ばれなくても、その瞬間を共有できる親友なのだ。ライバルは敵ではなく、自分を成長させてくれる仲間。そんな思いが、鍵山の心を強くしていることを窺わせた。