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杉原愛子「パリ五輪を目指す決心を…」“まさかの宣言”に込められた思い…初出場から8年、24歳が本音で語る「今は体操が楽しい」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/28 11:04
東京五輪後の“一区切り”を経て現役復帰し、来年のパリ五輪を目指すことを発表した女子体操の杉原愛子(24歳)
これに関しては、杭州アジア大会のすぐ後にあった世界選手権で、杉原より2歳上のシモーネ・バイルズ(米国)が東京五輪以来2年ぶりに米国代表に復帰し、4つの金メダルを手にしたことで勇気を得た面もあるようだ。
実は、杉原は今年2月にバイルズが所属している米国の体操クラブを訪問して施設や練習を見学したが、その時はまだバイルズの姿はなかった。バイルズは4月頃に練習を再開して全米チャンピオンになり、10月の世界選手権でワールドチャンピオンの座に返り咲いたのだ。
「まず、2月の時点でやっていなかったのに凄い! と思いました。それに、バイルズ選手は東京オリンピックの時の(メンタルヘルスの)こともあってパリを目指そうと思ったのかも知れません。そういうところもリスペクトする部分ですし、彼女から受ける刺激も大きかったですね」
10代の選手も多い中で、20代半ばで五輪出場を目指す意義を、杉原自身はどう感じているのだろうか。
「海外には1年休んで復帰する選手が結構多いですが、日本にはほぼいません。これまでは日本人やアジア人だから無理と思われがちでしたが、そういう価値観を打ち破りたいという思いもあります。日本人でもできるんだというのを見せたい。復帰の理由はたくさんあるのですが、その中の一つです」
「東京オリンピックの時とも違う杉原愛子を見てほしい」
一方で、東京五輪までとは違う力が身についたという自負もある。杉原によれば、16歳だった自分と24歳の自分を比較すると明らかに違いがあるという。
「高1の時に初代表になって世界選手権(英国・グラスゴー)に出ましたが、当時と比べると今の方が体操の味の出し方が違いますし、経験数も全然違います。若い時は自分でも勢いやスピーディーなところを感じていましたが、今はその時より体操が楽しいし、ダンスや踊りの見せ方はまったく違います。この1年間、指導者や審判の立場といういろいろな角度から体操を見ることができたのも武器。東京オリンピックの時とも違う杉原愛子を見てほしいと思っています。東京オリンピック前は基本練習は午前中にやって、午後は通し込みが中心でした。今は逆に通し込みよりも基本を中心に練習をしていて、基本の質も上がっています」
パリ五輪を見据えるには、まずは来年4月の全日本個人総合選手権がターゲットになる。来年の大会要項はまだ発表されていないが、例年通りならば予選と決勝の2日間を通して計8演技を行なう体力をつけることが必須で、実はこれが非常に難しい。
ただ、どんなに高いハードルもすべて乗り越えようというチャレンジャー精神が杉原にはある。「落ちた筋肉もだいぶ戻ってきました。全日本予選で24位に残って決勝に進むことが一番近い目標です」と話す時の目にはエネルギーがみなぎっている。
<つづく>