身体の使い方だけでなく、陸上とボクシングでは「勝ち方」も大きく異なる。その試合の臨み方の違いにも、新鮮な面白さを感じているという。

「陸上はお互いに100%を出し合ってどちらが勝つかという勝負。でも、ボクシングは対相手の競技ですし、相手のスタイルに合わせて戦い方も変わってくる。より対応力が求められる競技だなと思います。陸上時代は自分にフォーカスしていましたけれど、ボクシングは外に視野を広げなくちゃいけなくて。あと、陸上って試合にむけてコンディションを整えていくじゃないですか。逆にボクシングは減量があるので、試合が近づくにつれて、どんどん体調が悪くなって……」

　木村は苦笑いで振り返る。デビュー戦はスーパーフェザー級に出場したが、12月頭の第2戦はマッチメイクの事情で一階級下のフェザー級にエントリー。その差1.8キロを落とすのに、壮絶な減量が待ち構えていたそうだ。

©Shigeki Yamamoto

「デビュー戦のときは心配だったので、2カ月くらい前から徐々に減量を始めて、思ったより早く落ちすぎてしまったんです。なので、今回は1カ月半くらいにして始めたのですが、ラスト2週間からどんどん身体が動かなくなっていって……」

プロ2戦目で味わった「減量苦」

　デビュー戦の減量は、脂質を減らし、タンパク質や炭水化物をメインとした食事と水分をしっかり摂った上で順調に体重が落ちていったという。だが、2戦目の減量では後半になるにつれ、体重が落ちにくくなり、試合前夜の時点で残り700グラムと減量苦にあえいでいた。

「最後は水分をスポッと抜くんですけれど、減量末期は一切眠れないんですよ。喉も渇くし、耳もぼーっとして聞こえないような……。最後の2日間は絶飲絶食状態だったので、声も出なくなっていて。サウナに行っても汗一滴も出ない（笑）。前日の夜になっても全然落ちなくて、『これはやばい』と最終的にガムで唾液を出しました」

プロ2戦目ではギリギリの減量も経験した／本人のXより

　身体を極限状態まで追い込み、なんとか間に合わせた第2戦は、ジャブの差し合いから始まり、木村は右ストレートを度々ヒットさせるなど、会場を沸かせた。しかし後半は疲れも見え始め、判定負けを喫した。

　だが、試合を重ねるなかで自分の強みも少しずつ感じ始めているという。

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