「『頑張ろう』と決めたことに熱量を注げるところは、流石にプロ野球の一線も経験したアスリートならではと思います。初めて会ったとき、『自分はウソがつけない性格で……』と聞いたんですが、本当に実直で素直な性格。アスリートとしての強さに、素直さ、謙虚さも備えているので、ビジネスの場でも成功できる人材と確信しています。

　今はまだ、20年間の現役アスリート生活を送った人が、引退してセカンドキャリアを歩み始めると、“社会人１年目”として扱われるのが現状。そうではなく、アスリートとしてのキャリア、そこで身に付けた経験が正当に評価されて、たとえば20年間の現役アスリート生活を送った人が、引退して“社会人1年目”になるのではなく、“社会人21年目”と評価されるような世界を、一緒に作っていきたいです」

　今回の取材にあたっても、電話、メール、対面での取材を含め、田部の対応は懇切丁寧で、何年もビジネス界にいたのかと錯覚しそうなほどだった。

現在の田部隼人さん　©Kota Inoue

プロ野球から「逃げちゃったのは自分」

　引退決断から約1年。「もし続けていたら……」という思いを抱かなかったと言えばウソになる。

「やり切れなかった思いもありますし、今年やっていたらどうだったんだろうな、と思うことは正直あります。同学年の選手が活躍したり、高校の後輩の山本大斗（ロッテ）が一軍でヒットを打ったところを見たりすると、自分もやっていたら、と正直思いました。でも、そこから逃げちゃったのは自分だし、逃げずに踏ん張って、踏ん張って、頑張った人が一軍で活躍するのは、3年間プロにいて痛感したので。自分にはその自信がなかったし、（プロ野球選手に）向いていない性格だったのかなあ、とも思います」

　田部が続ける。

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