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「武豊は何度でも帰ってくる」ドウデュースで有馬記念を制した武豊がレース後に…不屈の天才騎手から届いた“恩人への鎮魂のメッセージ”
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/12/25 17:03
有馬記念を制したドウデュースと武豊。千両役者がクリスマスイブの中山競馬場で劇的な復活を遂げた
「ダービーのあと、苦しい思いをしていたので、この馬はこんなものではないとずっと思っていました。今日も強いメンバーでしたけど、ドウデュースが一番強いと思って乗りました。これまで素晴らしい馬に恵まれて、今日もドウデュースという名馬と有馬記念に挑めて、幸せだなと思います。やっぱり競馬はいいなと思います。メリークリスマス!」
そう話した武を背に、直線で末脚を伸ばしたドウデュースは、嬉しそうに走っているように見えた。
あれだけ前進気勢の強い馬を後方で抑え、最後にこれだけの力を残して末脚を爆発させることのできる騎手は、世界でほかにいないだろう。
負傷からの再起…天才騎手は何度でも帰ってくる
武は、この馬で天皇賞・秋に臨むはずだった10月29日、第5レース終了後、騎乗馬に右腿を蹴られて筋挫傷を負った。ひと月半ほどの治療とリハビリを経て朝日杯フューチュリティステークスの週に復帰。この有馬記念が復帰後の初勝利となった。
「ドウデュースも私も帰ってきました」
5万3453人の観客の前で、そう喜びを口にした。
10年前、キズナでダービーを制したときも「ぼくは帰ってきました」とお立ち台で言った。あのときは、2010年春の落馬負傷から復帰したあと、なかなか本来のリズムを取り戻せずにいたのだが、キズナとのコンビでダービー5勝目を挙げた。
武は、名馬とのコンビで、何度でも帰ってくる。
その年の秋、キズナとともに凱旋門賞に挑み、4着となった。
それ以来のダービー勝利となったドウデュースと臨んだ昨年の凱旋門賞は19着。「こんなものではない」という思いは、フランスでの走りに関しても抱いているだろう。
陣営は再度のフランス遠征に意欲的なコメントを残している。まずは、今年、現地入りしながら跛行のため出走できなかったドバイをターゲットとするようだ。